魔にして魔を狩る者
第十三話










冬休みもそろそろ折り返しに近づき、年末も近づいてきた。
この間感じたいやな予感というやつは今もって消えてくれない。
むしろさらに増しているという感じだ。
こういうときは誰かに相談すべきですね。
セシルさんは問題外ですね。
彼女がいやな予感なんて感じることはないでしょうから。
あの時伽藍の洞にいた人たちは除外するとして、無難なのは黒桐さん、式さん、霧絵さんあたりですか。
そんなことを考えながら散歩をしていると珍しい人にあった。
夏休みに機会があってであった瀬尾静音さんだった。
誰かと一緒だけど知り合いなのだろうか。





「こんにちは静音さん、お久しぶりですね、夏休み以来ですか」



「お久しぶりですね、水城さん。私が見た未来のとおりになるのなら近々厄介なことに巻き込まれますよ」



「いやな予感は当たるということですか。ところで一緒にいる女性を紹介していただけますか?」



「ごめんなさいそちらを先にすべきでしたね。彼女は瀬尾晶、私のいとこです。私と同じ能力を持っているんですよ」



「はじめまして瀬尾晶です」



「晶ちゃん、こちらは水城薫さん。見た目は女性みたいだけど男の人なの。後水城グループの御曹司よ」



「水城薫です、以後お見知りおきを」





お互いに挨拶を交わした後、簡単な自己紹介をした。
晶ちゃんはあの浅上女学院に通っているらしい。
浅上女学院といえば浅上のおじさんが出資している学校のひとつである。
浅上のおじさんは礼園にも出資しているが、浅上女学院にはより多くのお金を出資している。
浅上女学院にはあの遠野の次期当主たる遠野秋葉が通っている学校だ。
彼女の父親の遠野槙久氏はもう長くないだろうといわれているから、彼女が当主になるのはそう遠くない未来だろう。
僕の父はまだまだ現役だから、そうなれば彼女のほうが立場上は上といえるのだろう。
水城家も遠野家も混血のものを束ねる立場にあるんだから。
考えが脱線してしまった。
今は遠野家はどうでもいいことだった。





「静音さん、それであなたが見た厄介なことって何ですか?」



「水城さん、あなたは完全に女性に化けることってできますか?」





その言葉を聴いてなんとなくだけど厄介なことが理解できた。
すなわち女性に化けて何かをするということですか。
容姿だけならそのままでも大丈夫なのですが、そういうわけにも行かないことみたいですね。
最悪だ、女性と勘違いされることが大っ嫌いな僕が女性に化けなくてはならないなんて。





「まあ、可能ですよ。好き好んでやりたくはないですけど」



「さっきの言葉でなんとなく分かっていらっしゃると思いますけど、あなたは礼園に潜入してある事件を解決することになります」



「小火の件ですか?それは僕がかかわるような事件ではないと思いますが」



「いえそうではないと思います。詳しくは分かりません」



「そうですか、ありがとうございます。いやな予感が何なのか分かっただけでも儲け物ですよ」





その後しばらく三人でいろいろとしゃべってから別れた。
礼園で何かしらの事件が起こっていて僕とかかわりを持つことになるですか、魔術関連のことでしょうね。
鮮花さんのサポートということになるのでしょう。
面倒ではありますが避けられないことなのでしょう。






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