新世紀エヴァンゲリオン
交錯する時間
第二話
今日はシンジ君と一緒に第三東京市に出発する日だ。
とりあえずシンジ君と待ち合わせしている場所に行くとしよう。
シンジ君はもうすでに来ているようだ。
「もう来ていたんだね、シンジ君」
「うん、約束の時間には少し早いけど」
「では、行きましょうか?」
「そうだね」
そうして僕たちは第三東京市に向かった。
途中で史実どおりというか、電車は止まってしまったけど。
「やっぱりこんなところは、一緒なんだね」
「まあ、根本的な歴史の流れというのは、個人のちょっとした行動では変わりませんからね」
「僕たちはそれを変えなきゃいけないんだよね」
「そういうことですよ、シンジ君。僕たちは個人ではできないことをするために第三東京市まで来たんですよ」
シンジ君の第二の人生はここから始まるといってもいいでしょう。
一度目は破滅へと続く道でしたが、今回はそうならないことを願います。
列車の外に出てしばらく歩いていると、戦闘機が飛んできた。
「そろそろ、ミサトさんに会えるんだよね」
「彼女がそれほどの女性とは思えませんが。まあ、直接会ったことがないのでなんとも言いがたいですが」
「ねえ、大和君」
「何ですか、シンジ君」
「こんなところでほのぼのと話をしてて、いいのかななんて思ったんだけど」
「ほかに何かできるというわけではないのですから、葛城さんが来るのを待つとしましょう」
「うん、前回と同じならそろそろだよ」
シンジ君がそう言うと、こちらに向かって戦闘機が突っ込んできた。
「おや、これはやばいか」
「でも、もうよけられないね」
そんなことを言ってるうちにも戦闘機は近づいてくる。
間一髪のところで葛城さんの車が到着した。
「紙一重というところですか」
「碇シンジ君に三笠大和君ね」
「はじめまして、葛城ミサトさん。三笠大和です」
「碇シンジです」
「まあ、挨拶はこれくらいにして乗って」
「はい、わかりました、葛城さん」
僕がそう言うと、
「ミサトでいいわよ」
という返事が返ってきたが、
「初対面の女性を名前で呼ぶような趣味は持ち合わせていないので、しばらくは葛城さんと呼ばせていただきます」
「僕はミサトさんと呼ばせてもらいますね」
「そう、わかったわ」
葛城さんは少しの間電話をされた後、
「ところでシンジ君と大和君はシンジ君のお父さんからもらったIDカードを持ってる?」
と聞いてきた。
「ええ、持っていますが」
「それならいいのよ」
「そうですか」
「僕はしばらく見たいものがあるので話しかけないでくださいね」
「わかったよ、大和君」
僕はしばらくMAGIのデータをハッキングして、作戦司令室の映像でも拝んでおくとしよう。
「じゃあ、シンジ君あなたはお父さんの仕事は知っているの?」
「人類の平和を守る立派な仕事だと聞いています」
「じゃあ、お父さんのことはどう思っているの?」
葛城さんはずいぶんきつい質問をしているようだ。
デリカシーというものを持っていないのだろうか。
しばらくつまらない会話が続いた後、僕たちはジオフロントに到着した。
「これがジオフロント、人類の最後の砦よ」
「これがうわさの」
「じゃあ、付いて来て」
「わかりました、葛城さん」
しばらく歩いていると、
「ミサトさん、ここ一度通りませんでしたっけ?」
「おっかしいわね〜、この道で間違えないはずなのに〜?」
「葛城さん、迷ったんですか?」
「そうよ、でもここのシステムを使えば大丈夫よ」
「なら、さっさと使ってもらいたかったですね」
「大和君、いまさら言ってもしょうがないよ」
「そうだね」
そしてしばらくすると、エレベーターから一人の女性が降りてきた。
「ミサト、また迷ったの」
「ごみ〜ん」
「まあ、いいわ。あなたたちが碇シンジ君と三笠大和君ね。私は赤木リツコ、リツコでいいわ」
「僕は赤木さんと呼ばせていただきます」
「まあ、どう呼ぼうと関係ないけど。シンジ君、お父さんに合わせる前に見せたいものがあるんだけどついてきてくれる?」
「いいですけど」
シンジ君は行き先をわかっているので、どうでもいいという感じだ。
そうして僕たちは移動した。
「真っ暗ですね」
「今電気を入れるわ」
電気が入ると、そこにエヴァンゲリオン初号機の姿が浮かび上がった。
「すごいですね」
僕は正直な感想を言った。
「これは人型汎用決戦兵器エヴァンゲリオン初号機、人類の最後の切り札よ」
「このロボットが最後の切り札なのですか?」
「ロボットではなく、人造人間よ」
「人造人間ですか?」
「そうよ」
ロボットと人造人間の違いというのは細胞を持っているか否かということなので、エヴァには細胞があるのだろう。
「これが父さんの仕事ですか?」
「そうだ」
碇ゲンドウ氏のお出ましか、なかなかいいタイミングで登場なさる。
「どうして僕を呼んだの?」
「お前の考えているとおりだ」
「僕にこれに乗れって言うの?」
「そうだ」
「親子の会話中悪いのですが、この僕を呼んだ理由を伺いたいのですが」
「人質だ」
「予想通りとはいえそうはっきり言われると悪い気がしませんね」
「どういうことなんだよ、父さん」
「言葉どおりだ、お前が乗らなければこいつの命はない」
「そんなこと言わなくたって乗るよ、でも条件がある」
「いいだろう、条件については後で聞こう」
ほう、シンジ君もなかなかの交渉術をお持ちだ。
とりあえずのところはこれで良しとしますか。
「ついてきて、エヴァの操縦について説明するわ」
「わかりました、リツコさん」
こうしてエヴァが発進することになり僕たちは作戦司令室に移動した。
「葛城さん、ほかにパイロットはいないんですか?」
「ほかのパイロットは今怪我で入院中よ」
「ということはそれほどたくさんのパイロットがいるというわけではないというわけですか?」
「そうよ、日本にいるのはあと一人、そしてもう一人ドイツにいるわ」
なんと甘い。こうも簡単に機密を話すとは。
僕は一様部外者ですよ。
まあ、すぐに部外者ではなくなるでしょうけど。
エヴァンゲリオンの起動が始まった。
「LCL注水開始」
「何ですかこれは」
「大丈夫よ、肺に溜まれば呼吸もできるわ」
「うっ、気持ち悪い」
「我慢しなさい男の子でしょう」
「葛城さん、いきなりのことを我慢しろなどと言うのはひどい話ではないのですか?」
「それもそうね」
「そこ、無駄話をしない」
「は〜い」
「わかりました」
「それでいいわ」
「しっシンクロ率85%」
いきなりこのシンクロ率を出せば疑われるでしょうけど、仕方ないですね。
「このシンクロ率で間違いないのね」
やっぱり、リツコさんは疑っていますね。
「はい、異常ありません」
「リツコ〜、何か問題があるの?」
「戦闘面では問題ないわ」
「それなら、今は発進させるべきよ」
「そうね、今は急がないといけないわね」
「碇司令、かまいませんね」
「ああ、使徒を倒さねば人類に未来はない」
「エヴァ初号機発進」
ついに戦闘が始まったか。