影月の書
第十日目






タタリがこの街に存在を表そうとしているとの情報が手に入ってから、一晩が明けた。
それにしてもネロ、ロア、タタリと死ににくい死徒ばかりこの地に連続で現れるとは。
ご主人や志貴さまが居られるので仕方がないとは思うのだが、どうせならほかの死徒にしてほしいものです。



とりあえず午前中は情報収集といったところです。
しかしなかなか有力な情報は手に入らないものですね。
流れている噂はロード・オブ・ナイトメア様のこともあったのであるいはと思いますが気をつけなければなりませんね。



そうして情報収集をしているうちに夜になった。
シオンさんと合流しなくてはならないので僕は公園へと向かった。



その途中でありえざる怪奇と出会ったのだ。



「調子はどうかしら、MAGIU」


「僕が思ったからその姿になったのですか?」


「そういうことね」



最悪だ、僕が余計なことを考えなければこのようなことにはならなかっただろうに。
僕がタタリという死徒を甘く見すぎていたということですか。
まさかロード・オブ・ナイトメア様と戦わなければならなくなるとは。



「さあ、後悔するのもそれまでよ。戦いを始めましょう」


「その体のすべてを使いこなせますかね、満月の日でもないのに」



そうして僕とタタリとの戦闘が始まった。
所詮今回は前哨戦に過ぎないのだが相手が相手だけに手を抜くことなど許されはしない。
僕はすべての切り札を使ってでも勝つつもりだ。



まずは僕の切り札のその一、



「風雅の舞、二の型」



この風雅の舞、二の型は通常の風雅の舞のように風で斬るのではなく、竜巻を起こしその暴風で敵を粉砕するのだ。
その消費魔力も風雅の舞に比べて格段に高いがそれ以上に威力が高いのだ。
しかし、それでもタタリは消滅していないようだ。



「なかなかやるわね」


「お褒めの言葉ありがたく受け取っておきましょう」



これでようやく互角といったところですか。
これからは無駄な力は消費できませんね。
確実に当てるときに放たなければ、負けるのはこちらです。



僕とタタリとの戦闘は派手さこそないものの一撃一撃が相手の命を削るものになった。
僕が一撃入れればタタリも一撃入れるという一瞬の差が生死を分ける攻防だ。



少しずつお互いの体力も削られてきた。
そろそろ先の戦闘でも使った切り札を使用すべき時が来たようだ。
僕の能力の一つとして他人の血を飲むことでその力を手に入れるというものがあるのだ。
最大で二つまでという制限もあるが。
とはいえ僕より格上のロード・オブ・ナイトメア様などの血では僕のほうが持たないので、僕と同格以下のものでないとだめなのだが。
今回は前回と違い水を自在に操る力と前回と同じく回復呪文を使う力にしよう。



僕は水を操ってタタリを翻弄した。
やはりロード・オブ・ナイトメア様の力は完全には引き出せていないようだ。
このままいけば勝てる。



現実はそう簡単にはいかないようだ。
完全ではないとはいえその力は僕を超えている。
最初に与えたダメージもそろそろ回復してきたようだ。



ならば、一気に決める。
ここで決めなければジリ貧だ。
僕は操る水の量を倍にした。
それに加え風雅の舞も使い真空波でも攻撃することにした。
そのおかげもあって、戦況は再びこちら側に傾き始めた。



このまま攻めきることにする。
水を刃と化して攻撃することでタタリも追い詰めることが出来た。
満月である明日になるまでいったん幕引きとしよう。



「水竜牙」



水竜牙は水で作った牙により敵を突き刺す攻撃だ。
この攻撃により、ロード・オブ・ナイトメア様の姿を借りたタタリは消滅した。



その後僕は志貴様と合流し、事の次第を説明した。
これですべての結末は明日ということになった。
シオンさんはタタリという吸血鬼について詳しいのだがその理由についても語ってくれるのだろうか。
これが終わればもう吸血鬼騒ぎは終わりだろう。
今日はここまでにしよう。






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