影月の書
第七日目
その一

 

 

今日は戦いです。
しかも敵はリミッターを解除した僕とほぼ互角の二人ですから油断はできません。
今回はネロとの戦いで出さなかった切り札を切らなければならないかもしれませんね。
そのためにも準備をしておかなければ。
二人が起きてくる前に戦いの準備は済ませておこう。
戦いの準備をして、朝食の準備が済んだ頃、ご主人がお目覚めになった。


「おはようございます、ご主人」


「おはよう」


「ご主人、今日は学校はお休みなのですよね」


「そうだな、今日は創立記念日だからな」


「女カたちもそろそろ来るようですね」


「そうか」


「今回の戦いでは切り札をひとつ切らせていただきます」


「まあ、それも仕方なしか」


「すいません」


「でも、あれは最後までとっておけよ」


「わかりました」


「で、勝算はあるのか」


「はい、あります」


「それならいいが」


「おや、ついに魔界の門が開いたようです」


「ほぅ、ということはあいつらも来たんだな」


「ここに向かってこられるでしょうか」


「そうだな、たぶん来るだろうな」


「まあ、ロード・オブ・ナイトメア様は必ず来られるでしょう」


「そうだ、あいつらを出迎える準備をしないといけないな」


「そうですね」


「ところであの二人はまだ起きていないのか」


「そのようです」


噂をすれば何とやらということで、二人が起きてきた。


「やっと起きてきたんですか」


「うるさいな、いつ起きようと俺の勝手だろう」


「ねぇ、刹鬼」


「何だよ、妖妃」


「この近づいてきている気配って…」


「まさかこの気配は、雷禅様にナタク様」


「女カ様に妲己様の気配もあるわ」


「ロード・オブ・ナイトメア様の気配もありますよ」


「早くお迎えする準備をしなくちゃ」


「俺はその前に朝食をとるかな」


「ご主人、準備は僕がしておきますのでお気遣いなく」


「じゃあ、任せたぞ」


ということで、僕たちはロード・オブ・ナイトメア様たちが来られる準備をすることにした。


「おい、とりあえず邪魔なものはしまっておくぞ」


「そうですね。それにお茶菓子の準備もしなくてはなりませんね」


「そうよ、失礼がないようにしなくっちゃ」


「ここに来られるまであと三十分というところですか」


「そうね、急がなくちゃ」


「急いてはことを仕損じるぞ」


「それもそうね」


「あなた方がもっと早く起きてくればこんなことにはならなかったでしょうに」


「まあ、そうかもしれないが、でもそれでもこうなってたんじゃないか」


「そうよ、女カ様がいつ来るかなんてわからないでしょう」


「そうですね、じゃあ、片づけをする程度にしておきましょうか。二兎を追うものは一兎も得ずとも言いますからね」


「そうだな」


「そうしましょう」


僕たちは部屋を片付けることに集中した。
それからおよそ三十分後、ロード・オブ・ナイトメア様たちが来た。


「ふぅ、ここであっているようだな」


「そうだな、雷禅」


「おやおや、本当に予想通りの時間に来られるのですね」


「久しぶりね、MAGIU」


「そうですね、ロード・オブ・ナイトメア様」


「で、楊ゼンは居るの」


「はい」


「じゃあ、呼んでもらえるかしら」


「その必要はない」


「あら〜ん、楊ゼンちゃんの久しぶり〜ん?」


「久しぶりだな」


「貴様も相変わらずだな」


「うるさいな、雷禅」


「そちらしいもの言いじゃが、そろそろこんなところで話をするのも止めたらどうかのぅ」


「それもそうだな、女カ」


「それでは中にお入りください」


「じゃあ、お邪魔するぞ」


ロード・オブ・ナイトメア様たちが家にお入りになった。
片付けは無事終わっていたのでよかった。
もし片づけが終わっていなかったらどうなっていたのだろうか。


「ところでなんでこんなに早くから来たんだ」


「その理由など説明するにも値しないぞ、楊ゼン」


「そうじゃ、今晩の戦いのルールを決めるために決まっておろう」


「そうですね、ルールなしでやっては殺し合いになりますしね」


「ではとりあえず殺さずに気絶させるか、降参させたものの勝ちということでは」


「ほぉ、MAGIUにしてはまともな意見だな」


「そのMAGIUにしてはというのはどういうことです、雷禅?」


ご主人やロード・オブナイトメ様も笑っておられるようだ。


「お前の意見は現実的だが常識に欠けているといいたいんだよ」


「そうですかね」


ロード・オブ・ナイトメア様が笑って答えられた。


「確かに、そうね。楊ゼンもその辺は考慮に入れなかったのかしら」


「ちょっと待てよ、ロード・オブ・ナイトメア。MAGIUは人間界での常識がインプットされているだけだぞ」


「ということはあなたはMAGIUを作ったときから人間界に行くつもりだったのね」


「楊ゼンの勢力にいるのも大変なのね、ロード・オブ・ナイトメア」


「まあ、かつてのメフィストフェレスほどじゃないと思うわ」


「へぇ〜、でもわたしはメフィストフェレスは知らないわ」


「もう昔の話になるのね」


ロード・オブ・ナイトメア様は昔を懐かしんでおられるようだ。
僕は呆れていった。


「それくらいは知っておくべきだと思いますよ、妖妃」


「そうよ〜ん、妖妃ちゃん?」


妖妃は驚いていった。


「えっ、そんなに有名な人なの?」


本当に呆れたものだ。それでも女カの軍のNO.3なのだろうか。


「お前はよくそんなことも知らずに神霊クラスにいられるな」


「同感です」


「ひどいわ、MAGIUも刹鬼も」


「まあ、昔のことなんだから仕方ないだろう」


「ナタク、あなたまでそのようなことをいうのですか」


「あいつらは弱かったからな」


「あいつらって」


「ヴォルクルス軍のことですよ、妖妃」


「ということは、メフィストフェレスってヴォルクルス軍のNO.2だった人なの」


「ふぅ、やっと気づいたのですか」


「それならわかるわ、ロード・オブ・ナイトメア。楊ゼンは少なくとも馬鹿じゃないものね」


「あいつもとうとう馬鹿の代名詞になったか」


「そうね、楊ゼン」


ご主人とロード・オブ・ナイトメア様は何か悲しそうだった。


「仕方ないじゃない〜ん?」


しかし妲己は何も感じていないようだった。


「弱い奴に興味はない」


「そうだな、ナタク」


雷禅とナタクは相変わらずのようだ。


「まあ、皆さんその話はここまでにしませんか」


「そうね〜ん、MAGIUちゃ〜ん?」


「次の話はなんにするの」


ロード・オブ・ナイトメア様がそう尋ねられた。


「魔界の様子なんて聞いても仕方ないしな」


「じゃあ、もうこれからは雑談でもしようぜ」


刹鬼がそう提案すると皆様賛成された。
しばらく雑談が続いた後、


「おや、もう日が暮れてきたようだな」


とご主人がおっしゃったので、


「じゃあ、そろそろ戦いの舞台に移動するか」


と雷禅が言い、皆様学校に移動された。
学校に行ってみると、なにやら戦いが始まっているようだった。


「ふぅ、別の戦いもやっているようだな」


「そのようですね、雷禅様」


「ではどうしますか、ご主人」


「別にこの戦いに支障はきたさないだろう」


「では僕はその様子を記録するために式神を使っておきます」


「戦闘に支障をきたさないようにしろよ」


「わかっております」


「それより〜ん、さっさとはじめない〜ん?」


「そうだな、はじめようぜ、楊ゼン」


「じゃあ、最初はそれぞれの勢力のNO.3の戦いだな、雷禅」


「それでは、はじめ!」


雷禅の合図とともに戦いが始まった。
これからの戦いは、式神の映像で記録することにする。
客観性のない記録では役に立たないだろうから。






〜式神の映像記録(校舎内の戦い)〜





校舎内の戦いは志貴とアルクェイド対ロアだった。


「無様だな、姫君」


「四季、覚悟しろ」


「落ち着けよ、志貴。お前は後で殺してやるから」


「志貴は下がってて」


「それはできない」


「足手まといなのよ」


「わかったよ」


そうしてアルクェイドがロアと戦い始めた。
アルクェイドは先制攻撃を仕掛けて戦いを有利に運ぼうとしたが、ロアにはまったく利いていないようだ。
ロアはアルクェイドの弱さに愕然としているようだった。


「ここまで弱くなっているとはな」


今度はロアが攻め始めた。
ロアは上段回し蹴りでアルクェイドを蹴り飛ばし、壁際に追い詰めた。
アルクェイドは何かをしようとしているようだった。


「今日が満月でよかった」


アルクェイドは自分のすべてをかけた技をするようだ。
アルクェイドの周りの景色が歪んでいく。
その歪みはロアのところまで到達した。
ロアはその歪みのせいで体が消滅した。






〜式神の映像記録(校庭での戦い)〜





「それでは行かせてもらいますよ、二人とも」


「来い」


「行くわよ」


三人の戦いが始まった。
まずはMAGIUが先制の妖力波を放った。
その妖力波に二人は動じることもなかく、刹鬼が反撃の妖力波を放った。
その妖力波の干渉の影響で起こった煙にMAGIUが隠れた。


「しまったそのための魔力波だったのか」


MAGIUは妖妃に不意打ちを仕掛けた。


「やってくれたわね」


「これくらい読んでいると思ったのですが過信しすぎていたようですね」


「刹鬼を狙うと思っていたのに」


妖妃は大変腹を立てているようだった。


「まずはあなたを倒しておこうと思ったのですよ」


そこに刹鬼が呆れた様子で話しかけた。


「おい、戦いの途中でずいぶん余裕があるんだな」


「そういえばまだ戦いの途中でしたね」


MAGIUはそのことをすかっり忘れていたかのように言った。


「じゃあ、続きをはじめましょうか」


「行くぞ」


今度は刹鬼と妖妃が二人でMAGIUに攻撃を仕掛けた。
MAGIUはそれを紙一重でよけたがすぐに追撃が来た。


「くっ、これは効きますね」


MAGIUはそう言ってひざをついた。


「お前はしばらくそこで見ていろ」


刹鬼は軽蔑したような視線で言った。


「もう戦えないわね、MAGIU」


妖妃は心底悲しそうに言った。


「今度は貴様の番だぞ、妖妃」


「そう簡単にはいかないわよ」


こうして妖妃と刹鬼の戦いが始まった。






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