影月の書
第4日目

 

 

ネロとの戦いの決着がついて、一晩たった。
やっと、決着がついたと実感できる。
さて本日は僕も日常をしばらく記しておいてから、本題であるご主人たちの対話を記すことにする。



とりあえずは、ご主人がお目覚めになる前に食事の下拵えをしておかなくてはならない。
本日の朝食は中華にすることにしよう。
ほかのお手伝いさんもまだ起きていないし、ロボットである僕が下拵えをするのは当然なのです。
ちなみに今の時刻は午前4時である。
昨晩の出来事に決着がついたのが大体午前1時ごろだから、あれから3時間ほどしか経っていないがもう日常に戻った気がする。
ほかのお手伝いさんが起きるのが午前5時、
ご主人がお目覚めになるのが午前5時30分だから、
僕が下拵えをしておかなければならないのだ。



朝食の下拵えを始めた。
僕が体を与えられた目的の大半がこれなのだから冗談が過ぎる。
さて、まずは炊いてあったご飯をほぐしておこう。
後は適当に準備をしておけば後はお手伝いさんがおいしい中華を作ってくれるだろう。



そろそろお手伝いさんたちが目を覚ましてきた。
さて僕は掃除でもしておくか、
居間はご主人がお目覚めになるとすぐにいらっしゃる場所なので、
念入りに掃除をしておかなければならない。
居間の掃除が済んで片付けをし終わったところにちょうどご主人がいらっしゃった。


「今日の朝飯は何だ」


「今日の朝食は中華です、ご主人」


「中華か楽しみだ」


「ご主人、今日はどうなされるおつもりですか」


「いつもどおりだ」


「わかりました」


ご主人はお食事始められた。
ご主人はお食事を終えられると、少しお話をされた後、学校に向かわれた。
ご主人が登校された後、屋敷を掃除して、足りないものを買いに行った。
面白い偶然もあるのかも知れない。
買い物の途中で姫君にあった。


「あら、MAGIU。こんなところで会うなんて偶然ね〜」


「姫君、このようなところで会うとは思ってもいませんでした」


「どうせ暇だから、楊ゼンの家に連れて行ってくれない?別にいいでしょう?」


「別に問題はありませんが、ところで昼食はお済ですか」


「まだよ、それがどうしたの?」


「それではうちで食べられてはどうですか」


「そ〜お、じゃあそうさせてもらうわ」


そして僕は姫君を連れてうちへ向かった。
姫君が食事をとられて、しばらく話をした後、しばらくしてご主人が志貴様をつれて帰宅なされた。
さて、ご主人はどこまで話されるおつもりなのだろうか。


「アルクェイド・ブリュンスタッド、なぜこんなところにいる」


「偶然MAGIUに会って先に来たのよ。わかったかしら、楊ゼン」


「それなら理にかなってるな」


「面白い偶然もあるんだね、楊ゼン君」


「そうだね、遠野君」


「ご主人、どこまで話されるおつもりですか」


「大体のことは話すつもりだ」


「それでは長い話になりそうですね」


「そうだな」


「どれくらいの話になるんだい、楊ゼン君」


「二、三時間ほどの話になると思うけど」


「じゃあ、大丈夫か、これ以上門限を過ぎるわけにはいかないからな」


「私は多少長い話でもかまわないけど」


「さて、ではどのようなことから話しましょうか」


「楊ゼン、あなたが無限転生者といわれるようになった理由から教えなさいよ〜」


「俺もそのことについて聞きたいな」


「ではほとんどすべてを話さなければならないようですね。ところで二人は魔界について何か知っていますか」


「魔界?そうね〜、魔界には昔四つの勢力があって、それぞれの勢力が拮抗しあっていたと聞いているわ」


「俺はあまりよく知らないけど、それがどうしたの」


「僕は人間が入ることのできないといわれていた魔界に入ることに成功したんですよ。
そこで手に入れた力によって無限の転生を繰り返しているのですよ」


「魔界に入った〜、そんなことができるというの」


「確かに居間の魔界なら不可能だろうが、四千年前なら何とかなったのですよ」


「魔界で手に入れた力というのはどんなものなんだい」


「魔界で修行をして、神と呼ばれる力を手に入れたんですよ」


「神〜?四つの勢力の一端があなただというの〜?」


「もう三千年近く前のことですから姫君にとっては伝説同然のことなんですね」


「伝説ってどういうことだ」


「魔界戦線、かつて魔界で起こった戦いで、その戦いはさっき姫君が言った四つの勢力が戦った戦いですよ」


「その四つの勢力ってどういう勢力なんだ」


「死神といわれた僕と、闘神・雷禅、破壊神・女カ、邪神・ヴォルクルス、この四人がそれぞれ自分の勢力をもって戦ったんだよ」


「神同士の戦いというわけか」


「そういうことです」


「じゃあ戦いの発端はなんだったんだい。」


「戦いの発端はたいしてことじゃにないけど、僕が神と呼ばれるようになったからかもしれないな」


「どうして楊ゼン君は死神と呼ばれるようになったんだい」


「それは僕が魔界に入ってから、修行をして、ほかの妖怪にも引けをとらないようになった頃から、ほかの妖怪たちと戦うという修行方法をとったんだよ。
それで大勢の妖怪を殺して、ほかの神と呼ばれた三人とさえ引けをとらなくなったから、死神といわれるようになったんだよ」
「それで魔界戦線という戦いはどういう戦いだったんだい」


「それを語るのが今日の本題なんだから、いわれなくてもその話はするよ」


「じゃあさっさとその話に移りなさいよ〜」


「その前にMAGIU、何か食べ物でももってこい」


「了解しました」


そして僕はお茶とお茶菓子を持っていった。


「それでは話を再開しますか」


「ところでこのお茶菓子おいしいね〜」


「それは関係ないだろう、アルクェイド」


「そうね〜、話を続けて」


「では話を再開させてもらうよ。
まず戦いの火蓋を切ったのが僕とヴォルクルスの戦いだった。
あいつは僕のことを嫌っていませんでしたが、ちょっとした意見の食い違いから戦いになったんですよ」


「どんな意見の食い違いなんだい。」


「中華は四川系か、北京系かという対立だったかな」


「ほんとにつまらない対立ね〜」


「それが原因で魔界戦線が始まったんだから魔界というのはすごいところですよ」


「私でさえ魔界に入ったことはないのよね〜」


「魔界に入るのはやめておいたほうがいいと思いますよ、姫君にはあそこの空気は耐えられないだろうから」


「そうしておくわ」


「その対立から戦いが始まり、ほかの二人もその戦いに巻き込まれたんですよ。
その戦いがそれぞれの勢力をつり出す結果になったんだ。
僕の勢力は対外がもともと表立って戦闘をするような連中じゃあなかったんですけど、不意打ちなどというのを得意としている連中がメインだったんだよ。
まあ、僕が死神と呼ばれていたんですから当然ですけど。
ヴォルクルスの勢力は精神攻撃等を得意とする連中がメインでしたし、
女カの戦力は大量破壊が得意な連中メインで、一番純粋な戦いが得意だったのは雷禅の戦力だったたかな」


「細かい戦力分析はこの僕MAGIUが解説させていただきます。
まずは女カの軍について解説させていただきます。
女カの軍のトップは女カで、
彼女は最強の宝貝といわれている四宝剣と精神宝貝・山河社稷図の二つの宝貝を使って戦うのを得意としています。
四宝剣の攻撃力にはほかのどのような武器もかないませんから、彼女と一対一で戦うのは避けるべきと思われます。
山河社稷図は精神を特殊な空間に閉じ込めたり、直接攻撃することもできる便利な宝貝です。」


「その宝貝というのはどんなものなのだい教えてくれないかい」


「宝貝というのは、使用者の力を吸い取って奇跡を起こす武器のことです、わかっていただけましたか、志貴様」


「わかったよ、MAGIU君」


「さて、では説明の続きをさせていただきます。
女カには腹心の千年の雌狐といわれる蘇妲己がいます。
それは今現在でも変わっていないでしょう。
妲己は傾世元禳という防御と神経攪乱に使える宝貝と攻撃用の宝貝・五火七禽扇の二つを使って戦うのがメインです。
女カはそのほかの部下に自分の力の一部を分け与え、それらを使ってひとつの土地ごと破壊するということもしばしばでした。
次に邪神ヴォルクルスの軍について説明させていただきます。
ヴォルクルスは精神攻撃をメインにしています、
そして彼が得意な精神攻撃は女カの得意な神経攪乱系ではなく、精神崩壊を起こすようなタイプの精神攻撃で、
味方同士の同士討ちを誘う様な攻撃を得意としています。
彼自身の力もほかの三人に劣るわけではないですから、純粋に戦ってもかなりの強さを発揮できます。
しかし彼は第三次魔界戦線の最中にご主人の手によって倒されています。
ヴォルクルスの腹心には大悪魔・メフィストフェレスがいます。
彼は魔術や魔法を自在に使いこなします。
ヴォルクルスは大量の妖怪を引き連れて戦いをし、かつ敵の混乱を誘うようなこともしますから、できる限り少数精鋭で戦うことが求められます。
ご主人はご自身と腹心の金色の魔王・ロード・オブ・ナイトメア様のたった二人でヴォルクルスの軍の中枢に乗り込み、二人を討ち取られたのですよ。
ということで、次はご主人の戦力について説明させていただきます。
ご主人は宝貝・三尖刀と宝貝・六魂幡と宝貝・哮天犬の三つの宝貝と魂喰らいの妖刀・雪月を使っています。
三尖刀は近距離または中距離用の宝貝で斬撃の衝撃波を飛ばします。
六魂幡は特殊な宝貝でそれで包んだすべてのものを無に帰すという残酷な宝貝です。
哮天犬は生物系の宝貝で犬の形をとっていて、それ自体が意思を持っています。
ロード・オブ・ナイトメア様はメフィストフェレスと同じく魔術や魔法を得意とし、特に虚無を作り出す術を得意とします。
ご主人とロード・オブ・ナイトメア様のお二人のコンビメーションは大変恐れられていたので、敵はお二人をばらばらにすることをすることをその戦闘の最初の目的にしていました。
最後に雷禅の軍について説明させていただきます。
雷禅は武器なしの純粋な戦闘能力と妖力の高さは魔界一です。
彼は武器の類をまったく使わず戦いますが、彼は自身の妖力を指先にためて弾丸のように放つという技術を持っているので、遠距離戦もできるのです。
彼の腹心は李ナタクは宝貝人間と呼ばれており、彼は同時に六つの宝貝を操ります。
その六つとは、まず攻撃用の宝貝・乾坤圏、宝貝・金磚、宝貝・火尖鎗、宝貝・金蛟剪の四つを使い、
移動用の宝貝・風火輪と捕獲用の宝貝・九竜神火罩の計六つの宝貝を使います。
特に金蛟剪は女カの四宝剣に次ぐ攻撃力を持つ宝貝なので注意が必要です。
雷禅の軍は純粋に戦闘を仕掛けてくるために、大変戦いづらい敵です。
これで戦力分析についての説明を終わらせていただきます」


「一通り戦力分析について終わったところで、実際の戦闘について記録フィルムでも見てもらうか」


「記録フィルムなんてものがあったのかい」


「記録のフィルムも第一次から第三次まですべての記録があるよ。
それぞれの戦力が次の戦いがあったときのために記録をするということはずいぶん前から技術ができていたんだよ。
戦争のための技術は人間界より魔界のほうが進んでいるんだよ。
その典型的な例はMAGIUだろう。
MAGIUでさえ、体はこちらに来るときに作り変えているけど、千年近く前に完成しているんだよ」


「そうなんだ」


「じゃあ記録フィルムを見てもらうよ」







〜第一次魔界戦線記録フィルム〜



『楊ゼン軍』


「ロード・オブ・ナイトメア、くだらない事から戦いが始まったな」


「そうか、私はこの戦いは始まるべくして始まったと思うけどね」


「原因はもう少しまともなものだと思っていたんだが、実際は料理についてだもんな」


「確かに実にくだらないことよね」


「まあ、戦いが始まった以上短期決戦で決めたいものだな」


「それは無理でしょう、ほかの二つの勢力も参戦しそうな雰囲気ですからね」


「それは確かか」


「ああ、そのようよ。特に雷禅の軍はすぐにでも参戦してくるとおもうわ」


「なら軍備を整える必要があるようだな」


「そうね、では軍備を整えさせておくわ」


「ありがとう、お前は頼りになるな、ロード・オブ・ナイトメア」


「ほめてもないも出ないわよ」


「では頼む」


「わかっているわよ」



『ヴォルクルス軍』


「やっと戦いが始まるようだな、メフィストフェレス」


「そのようだな、ヴォルクルス」


「楊ゼンのやつもこんな下らんことで戦いが始まるとは思っても見なかっただろうな」


「それはそうだろうが、軍備のほうは大丈夫なのか」


「もちろんだ。こちらから宣戦布告したんだからな」


「じゃあ、すぐにでも楊ゼンの軍と戦うのか」


「そういうものでもないさ、この戦いを大きなものにして、魔界の覇権を争う戦いにする必要があるからな」


「その戦いに勝てる自信はあるのか」


「もちろんだ。勝てる見込みのない戦いなど仕掛けんよ。さて後は仕上げに移るとするか」


「この戦い勝たなきゃ終われないな」


「そうだ。そのために軍備を整えてきたのだ」



『雷禅軍』


「雷禅、戦いが始まるようだな」


「そうだな、ナタク。俺たちももちろん参戦するぞ」


「ということは、この戦いが魔界の覇権争いとなるのか」


「そうなるな。ヴォルクルスはそれが望みだろうからな」


「楊ゼンとはあまり戦いたくないな」


「そうだな、楊ゼンとは戦ではなく、純粋に勝負だけをしたいものだな」


「とりあえずはヴォルクルス軍の方と戦うのか」


「ああ、向こうは準備も整っているだろうからな」


「こちらもすぐにでも戦はできるぞ」


「とはいえ、女カ軍の動きも見る必要があるから、出陣はその後だ」


「ではそうしておくぞ」



『女カ軍』


「女カ様、戦争になりそうよ〜ん?」


「わらわたちも参戦せねばなるまい」


「そのようね〜ん?ほかのみんなにも戦いの準備をさせておくわ〜ん?」


「そちに任せる」


「女カ様、まずはどこと戦うおつもりなの〜ん?」


「まずは楊ゼンの軍を牽制してから、ヴォルクルスと雷禅が戦うだろうからそれに勝ったほうと戦う」


「楊ゼンちゃんも厄介よ〜ん?」


「だから牽制程度にしておくつもりじゃ」


「そのように計らうわ〜ん?」





〜三ヵ月後〜
戦いが始まった。ヴォルクルス軍と雷禅軍、楊ゼン軍と女カ軍、それぞれの戦いは拮抗状態であった。



『女カ軍』


「楊ゼンもなかなかやりおるな」


「女カ様、戦いは拮抗状態よ〜ん?」


「この戦いはあまり長引かせるつもりはなかったのだがな」


「どうなされるおつもりなの〜ん?」


「総攻撃を仕掛けるしかあるまいて」


「じゃあ準備をさせるわ〜ん?」



『楊ゼン軍』


「よもや、女カとの戦いになるとは」


「楊ゼン、女カ軍が動き出しそうね」


「ロード・オブ・ナイトメア、お前はどうするべきだと思う」


「死神とまで言われたものが情けないわね、もう総攻撃しかないわよ」


「やはりそれしかないか。では、総攻撃の準備をしろ」



『女カ軍と楊ゼン軍の戦い』


女カ軍と楊ゼン軍はそれぞれ小細工なしの総力戦に移った。
女カと妲己が楊ゼン軍に攻撃を仕掛け、楊ゼン軍はその三割を失った。
楊ゼンとロード・オブ・ナイトメアは女カ軍本陣に切り込み、女カ軍の指揮系統を断った。
お互いの戦力は大いに乱れ、戦いを継続するのは困難になり、戦いはまた振り出しに戻った。



『楊ゼン軍』


「楊ゼン、女カと妲己の軍を混乱させることには成功したけど、こちら側の被害も甚大よ」


「わかっているさ、そろそろ戦いを継続しきれなくなってきたようだな」


「じゃあ、どうするつもり」


「女カの軍も状況は大差ないだろう」


「それはそうだけど、まさか」


「そうだ。和平を申し込むつもりだ」


「向こうがそれを受け入れると思ているの」


「受け入れるさ」


「どうしてそんなに自信を持てるの?」


「じゃあ聞くが、戦っているのは俺たちと女カ軍だけか」


「そういうことね、確かにこのまま戦って勝っても、ヴォルクルスか雷禅の軍に負けるだろうからね」


「そういうことだ。女カは俺たちを牽制するだけのつもりだったようだが戦力を使いすぎたな」


「ヴォルクルスたちの戦いはどうするつもり」


「傍観するさ」


「では和平の使者を用意するわね」


「その必要はないさ、俺たち自身で行くのさ」


「それが一番安全というわけね」


「そういうことだ。じゃあいくぞ」



『女カ軍』


「女カ様、こちらの指揮系統は乱れに乱れきっているわ〜ん?」


「楊ゼンのほうも自軍の三割を失って行動に移れまい」


「これでまた振り出しね〜ん?」


「楊ゼンは次はどの様な手を打ってくるつもりかぇ」


「わらわにはわからないわ〜ん?誰か来たみたいよ〜ん?」


「報告します」


「何があったの〜ん?」


「楊ゼンとロード・オブ・ナイトメアが我が軍に来ています」


「そうじゃあここに呼びなさ〜ぃん」


「その必要はありませんよ」


「あ〜ら、楊ゼンちゃん何しに来たの〜ん?」


「和平を申し込みに来たのさ」


「和平か、なぜこのタイミングで」


「愚問ですね、女カ。これ以上戦ったところで、決着がついてもその後の戦いができないだろう」


「あらあら〜ん、楊ゼンちゃんも後のことを考えていたの〜ん?」


「もともとこの戦いの発端は俺とヴォルクルスとの喧嘩だぞ」


「そういえばそうだったわね〜ん?」


「ところで女カ、お前は和平についてどう思っている」


「わらわはかまわぬが」


「では、お互い来週の頭に軍を引くということで」


「ああ、わかった。それでいいだろう」


かくして、楊ゼン軍と女カ軍の戦いは決着がつかずじまいになった。
それぞれの軍は自分の領地に戻り、残りの雷禅とヴォルクルスとの戦いの決着がつくまでにお互いの戦力も立て直すことに集中した。
ヴォルクルス軍と雷禅軍の戦いはお互い戦力の蓄えが多かったこともあり、消耗戦になった。



『雷禅軍』


「女カと楊ゼンは和平を結んだようだな、ナタク」


「そのようだな。俺たちもここで戦いを止めにするのか」


「その必要はないさ。まだまだ、楊ゼンの軍と女カの軍を合わせたよりも戦力はあるからな」


「ああ、女カの軍も楊ゼンとロード・オブ・ナイトメアが中央突破したせいで士気も下がって、逃亡者が増えたようだからな」


「軍があと半分になるくらいまでは戦うさ」


「そうこなくっちゃ、面白くないもんな」


「さてと、ヴォルクルスの方は我が軍の混乱を煽ろうと頑張っている様だな」


「でも、それも無理だろうな。俺たちの軍は統率が取れているというよりも、それぞれがやるべきことをやっているだけだからな」


「そういうことだ。だからこそヴォルクルスの軍と戦っているのだからな」


「敵がいつ痺れを切らして戦闘を仕掛けてくるかが重要だな」


「小競り合いばかりが続くようなら、こちらから仕掛けるがな」


「しばらくは向こうの出方を伺うというわけか」


「そういうことだ」



『ヴォルクルス軍』


「予想外に敵の団結は固いようだな、ヴォルクルス」


「違うぞ、メフィストフェレス。あいつらの団結力はわれわれの予想を下回っている」


「ならばなぜ敵の混乱を誘うことができん」


「あの連中は俺たちと戦うことだけを考えているからだ。さすがは闘神の部下だ、戦うことしか能がない」


「敵が馬鹿だから、混乱を誘えないということか」


「そういうことだ、とりあえずこのままではどうしようもないから多少大きな戦いをする必要がある」


「どうしてだ」


「女カや楊ゼンが軍備を再編する前に決着をつけなければならないからな。
楊ゼンや女カには精神攻撃も通用しないし、妲己やロード・オブ・ナイトメアと戦うのはお前だけでは荷が重いだろうからな」


「NO.1とNO.2の戦力では俺たちが一番下だと言いたいのか」


「純粋に戦えばの話だ。実際にあいつらを殺す方法などいくらでもあるさ。
それを今すぐにでも実行できるかは別としたらな」


「どちらにしても雷禅やナタクは戦いのプロだぞ、どう戦うつもりだ」


「戦闘要員の数はこちらのほうが多いし、まだ何とかなるさ。
とはいえ女カの軍や楊ゼンの軍とは戦うことはしばらくできそうにないがな」


「この戦いは雷禅の軍をつぶすことにかけるということか」


「そういうことだ。雷禅の軍さえつぶしてしまえば、女カや楊ゼンの軍はいかようにでもできるさ」


「確かにそれはそうだろうが、今は如何にして雷禅の軍を倒すかだ」


「ああ、確かに雷禅の軍の軍備が整っていたとは予想外の自体だからな。
おかげで計画が三年ほど遅れをとりそうだ。こうなれば、総攻撃しかあるまい」


「敵もそれを望んでいると思うが、どうするつもりだ」


「そんなこと百も承知だ。そんなことはどうでもいいことさ、あいつらにはそれしかできないんだからな。
問題は如何にして俺たちが雷禅とナタクに不意打ちをかけるかだ。
ほかの連中などは捨て駒にしても良いぐらいだ」


「不意打ちしかないか」


「そういうことだ行くぞ」


ヴォルクルスとメフィストフェレスは自軍が総攻撃を仕掛けている最中に雷禅の軍に不意打ちを仕掛けようとした。
しかし、TOP2が欠け統率力の薄いヴォルクルス軍は次第に押されていった。



『雷禅軍』


「ナタク、敵の様子がおかしいようだな」


「ああ、歯ごたえがなさ過ぎる。何か企んでいるんだろう」


「何だと思う。うん、敵か」


「そのようだな。気配や殺気を消しているのは当然だが、音にも気を配るべきだったな」


「音だと!?」
「やはりお前たち二人か。疑っている最中だったから衣擦れの音で気づくことができたんだ」


「そんなところまでは気が回らなかった、失敗のようだな、メフィストフェレス」


「そうだな。こうなれば、直接戦うまでだ」


「不意打ちをしなければならないようなやつが直接戦ってもたかが知れているがな」


「ほざけ、雷禅。このヴォルクルス貴様ら程度に遅れはとらんわ」


「ではその実力見せてもらうぞ」


「楽しませてくれよな」


「ナタク、貴様の相手はこのメフィストフェレス様がしてやる」


「では行くぞ」


雷禅とヴォルクルス、ナタクとメフィストフェレスの二つの戦いが始まった。
雷禅が距離を詰め、ヴォルクルスに殴りかかった。
ヴォルクルスはその攻撃を何とかかわし、反撃に移った。
しかし雷禅の追撃がヴォルクルスの左肩に直撃した。
ヴォルクルスは左肩を魔術で治療しようとし、距離をとり、呪文を唱えた。
よほどダメージが大きかったのだろう完全に回復しきることはできなかった。
雷禅が近づいてくる。
ヴォルクルスは距離をとったまま魔力の炎を放った。
雷禅は炎をかわし切る事ができず、多少ダメージを負った。
雷禅はそのダメージも気にせず突っ込んでいく。
ヴォルクルスはさらに追撃を加えようと呪文を唱え始めた。
雷禅も指先に妖力を溜め始めた。
ヴォルクルスが呪文を唱え終わるのと雷禅の指先に妖力が溜まり切るのはほぼ同時だった。


「食らえ、妖力弾」


「これで止めだ、ハイパーソニックウェーブ」


雷禅の妖力弾がヴォルクルスのハイパーソニックウェーブを打ち消して、ヴォルクルスに直撃した。
ナタクとメフィストフェレスの戦いのほうは、
ナタクの火尖鎗での攻撃をメフィストフェレスが巧みにかわし、魔力の雷を?咤に落とした。
ナタクはそれを何とかかわした。
ナタクはヴォルクルスとは違いすばやくその場から離れて、体勢を立て直した。
ナタクは金磚でメフィストフェレスを牽制した。
体勢を立て直した?咤は素早く火尖鎗で攻撃を仕掛けた。
その攻撃をメフィストフェレスは難なくかわし、反撃に移った。
ナタクはメフィストフェレスの反撃を読んでいたため、
それにカウンターを合わせた。
そのカウンターの一撃よほど効いたのだろうか、
メフィストフェレスは回復魔法を唱えることもできないようだ。


「これで終わりのようだな。向こうも決着がついたようだしな」


「やはりお前たちは強いな」


「雷禅、今回の戦いはこの辺で引かせてもらうぞ」


「ヴォルクルス、貴様どうやって逃げるつもりだ」


「ふん、知れたこと。光よ!」


「引くぞ、メフィストフェレス」


「ナタク、決着は次の機会に持ち越しだな」


「雷禅、今回は負けにしておいてやるが、この借りは必ず返させてもらうぞ」


「ふん、楽しみにしておくぞ、ヴォルクルス」


こうして第一次魔界戦線は勝敗はつかずに終わった。
ただしどの軍も被害は甚大で、特にヴォルクルスの軍は最後の作戦でほぼ壊滅状態となった。
しばらくの間魔界では小競り合いもなくなるという異常事態が起こった。



〜記録フィルム終了〜






「まずは第一次魔界戦線の記録フィルムを見ていただきました」


「これが伝説の魔界戦線なのね〜」


「そうだ。後第二次、第三次魔界戦線があるぞ」


「第二次魔界戦線は二つの戦力が組んで戦っています」


「ということはかなり派手な戦いなんだね」


「そういうことです、志貴様」


「じゃあ、第二次魔界戦線の記録フィルムを見てもらうよ」


「それでは記録フィルムの再生を開始させていただきます」






〜第二次魔界戦線記録フィルム〜



第一次魔界戦線から十年後、魔界では再び不穏な空気が流れ始めた。
今度は女カ軍とヴォルクルス軍の連合軍と雷禅軍と楊ゼン軍の連合軍の二つの勢力に分かれて小競り合いが始まった。



『楊ゼン軍』


「よもやヴォルクルスと女カが組むとはな」


「楊ゼン、こちらが組んでいるのよ、向こうが組むのは当然よ」


「別に組んでいるわけじゃあないさ。お互いに不可侵条約を結んでいるだけさ」


「女カとヴォルクルスの方もそんなもんだろう」


「別に組まなくてもいいだろうに、これじゃあじきに魔界の戦力が完全に真っ二つになってしまうぞ」


「でも雷禅が敵に回るよりはましだと思うけどね」


「それはそうだろうけれど、軍備を整える必要があるな」


「そうね、やっておきましょう」


「頼むぞ」


「わかっているわよ」


「あまり急いでやるなよ。できれば、ほかの戦力にばれないようにやれ」


「了解よ」



『女カ軍』


「女カ様、雷禅ちゃんとではなく、ヴォルクルスちゃんと組んだのはなぜなの〜ん?」


「雷禅と組んだ場合後で雷禅軍と一対一で戦うことになりそうだからのぉ」


「そうね〜ん?雷禅ちゃんの軍と一対一じゃあ不利過ぎるもんね〜ん?」


「楊ゼンの奴はどうするつもりなんだ」


「楊ゼンちゃんと雷禅ちゃんは仲が良いからお互いの軍が存在したままにしておくと思うわ〜ん?」


「確かにあやつら二人ならそうなるじゃろうな」


「たとえわらわたちが勝ってもヴォルクルスちゃんの軍と戦わなきゃいけないのよね〜ん?」


「そういうことじゃ、そのために戦力を温存しときたいところじゃが、そうもゆくまいて」


「そうよね〜ん?雷禅ちゃん相手に戦力の出し惜しみはだめよね〜ん?」


「ヴォルクルスの方も戦力の出し惜しみはするまいて」


「そうよね〜ん?この戦いに勝ったら、しばらく戦いがなくなるわよね〜ん?」


「それもせいぜい一年程度だろうがのぉ」


「それじゃあ、準備を整えておくわ〜ん?」


「それはそちに任せる」


「わかったわ〜ん?」



『雷禅軍』


「雷禅、楊ゼンと組んだのは正解のようだな」


「ああ、この戦いに専念できるからな。あいつも俺も魔界の覇権には興味ないしな」


「そうだな。魔界の覇権よりも戦いだもんな、俺たちは」


「あいつらは別に普通に生きていければいいだろうしな」


「ロード・オブ・ナイトメアなんかは虚無を望んでいるだろうし、お前や楊ゼンは変わり者だからな」


「そういうことだ。変わり者同士は分かり合えるものだからな」


「そんなことよりもこの戦いをどうするかだろう」


「そうだな。さっさと軍備を整えておけ」


「わかった。準備させておく」


「この戦争かなり長引きそうだから、食料も準備しておけ」


「わかった」



『ヴォルクルス軍』



「ヴォルクルス、前回の借りは返せそうか」


「女カがどう動くか次第だろうな。多分俺たちの望むように動くと思うが」


「とりあえず、軍備は整えておくべきだな」


「そうだ、食料もだぞ」


「わかった」


「今度は前回のようにはいかんぞ」



『楊ゼン軍と雷禅軍の会談』


「よく来たな、楊ゼン」


「お久しぶりですね、雷禅」


「ナタク、久しぶりね」


「そうだな、ロード・オブ・ナイトメア」


「ところで、雷禅。お前はこの戦いをどうするつもりだ」


「ヴォルクルス軍と女カ軍のどっちと戦うかということか」


「そうだ」


「俺はどちらでもかまわないが」


「じゃあ、僕がヴォルクルスと戦わせてくれないか」


「どうしてだ?」


「前回の戦いの原因を作ったのは俺とヴォルクルスの争いだからな」


「そういえばそうだったな。わかった」


「すまない、雷禅」


「別にかまわないさ、女カとも戦ってみたかったしな」



『女カ軍とヴォルクルス軍の会談』


「ようこそ、ヴォルクルス」


「久しぶりだな、女カ」


「メフィちゃんも久しぶりね〜ん?」


「貴様は相変わらずのようだな、妲己」


「ところでこの戦いお前はどうするつもりだ、女カ」


「わらわは、戦いを挑んできた方と戦うつもりじゃが」


「ということは、俺は雷禅と決着をつけることができるか」


「そうとは限らないわよ〜ん?楊ゼンちゃんがヴォルクルスちゃんと戦うことも十分に考えられるわ〜ん?」


「楊ゼンが俺とわざわざ戦わねばならない理由などないだろう」


「馬鹿ね〜ん?前回の戦いは楊ゼンちゃんとあなたの争いが原因でしょ〜ん?その決着をつける他は考えられないの〜ん?」


「楊ゼンがそんなことをするとは思えんが」


「それは分かるまいて」


「女カ、お前までそんなことを言うのか」


「楊ゼンの性格から考えるとどちらも考えられるということじゃ。今回は雷禅と組んでおるのじゃからのぉ」


「とりあえずどちらが攻めてきてもいいようにはしておくがな」


「それじゃあ、またあいましょ〜ん?」


「すぐに戦場で会うことになるさ、敵同士としてな」


「もう勝った気でいるとはな」



『楊ゼン軍とヴォルクルス軍の戦い』


楊ゼン軍はヴォルクルス軍に正式に宣戦布告した。
楊ゼン軍は不意打ち等を巧みに使い、敵の上位の指揮官を数人殺したが、
ヴォルクルス軍も精神攻撃で敵の士気を落とし、数百人の寝返りを生み出した。
お互いに決定力が不足したまま三ヶ月が過ぎた。



『楊ゼン軍』


「ロード・オブ・ナイトメア、この戦いは面倒だな」


「そうね、楊ゼン」


「お互いに敵に決定的なダメージを与えられないからな」


「地味な戦いなのよね」


「女カ軍と雷禅軍の戦いは派手だからな」


「あの人たちは派手好きだからね」


「でも地味なほうが厄介なときもあるからな」


「それもそうだけど、やっぱりそろそろ派手にやりあいたいわね」


「そうだな、そろそろ仕掛けていかないと、軍の士気が下がる一方だからな」


「じゃあ、総攻撃の準備をさせましょうか」


「そうだな、頼む」


「分かったわ」


「ばれないようにやれよ」


「分かっているわ」


「まあ、うちの軍は秘密行動は得意だから大丈夫だろうけど」


「それもそうね」



『ヴォルクルス軍』


「メフィストフェレス、やはり戦いはこうでないとな」


「俺はもう少し派手でもいいと思うけど」


「楊ゼンはかなり慎重な戦いをするタイプだから、もうしばらく膠着状態が続くぞ」


「そうだな、あいつは雷禅とは違うからな」


「じゃあもう少し混乱をあおっておくか」


「もうこれ以上の効果は得られないだろうから、暗殺に気をつけさせろ」


「そうだな、うちの軍の将も5分の一が暗殺されているからな」


「後どれくらいこの膠着状態が続くだろうか」


「うちの将が後5、6人殺されるまでは続くだろうな」


「こちらからは仕掛けないのか」


「こちらも暗殺を仕掛けるさ」


「向こうもまさか暗殺をこちらが仕掛けるとは思わないだろうからな」



それから一月後



『楊ゼン軍』


「ヴォルクルスも馬鹿だな」


「そうね」


「確かに俺たちは敵が暗殺をしてくるとは予想してないが」


「でも一通り対処法を知っているもんね」


「普段から暗殺には気を配っているし」


「自分たちが得意なだけにね」


「だから予想外でも、暗殺は防げるからな」


「そうだ、総攻撃の準備は気づかれずにできたわよ」


「ああ、最初は気づかれたのかと思ってあせったからな」


「でもヴォルクルスはまったく気づいていないようね」


「あいつは戦いについて何も分かってないな」


「そうね。じわじわ責めるのは戦いの前にやることよね」


「この戦いはもらったな」


「そうね」


「じゃあ、総攻撃を仕掛けるぞ」


「分かったわ」



『ヴォルクルス軍』


「なぜ暗殺に失敗するんだ?わかるか、メフィストフェレス」


「敵は予想してはいなかったようだが」


「普段から慣れているということか」


「そういうことか」


「日々暗殺に気を配っているなんて、流石は死神の部下だな」


「常に死の恐怖におびえているのか?」


「そんなことはないだろうが、それが普通なんだろうな」


「暗殺できないとなるとどうするべきか」


「総攻撃するしかないだような」


「仕方ないが、総攻撃の準備を整えろ」


「分かった」



『楊ゼン軍とヴォルクルス軍の戦い』



楊ゼン軍はヴォルクルス軍が総攻撃の準備が整わないうちに総攻撃を仕掛けた。
楊ゼン軍はヴォルクルス軍を圧倒し、
ヴォルクルス軍はほぼ壊滅状態になった。
しかし、ヴォルクルスとメフィストフェレスは楊ゼン軍の中央と突破した。
その被害も無視できるものではなかった。


「ロード・オブ・ナイトメア、敵も意外とやるな」


「そうね」


「そろそろ、ヴォルクルスもここに来るだろうな」


「もうその辺にいるかもね」


「そうだな」


10分後


「来たようだな」


「そのようね」


「よく来たな、ヴォルクルス、メフィストフェレス」


「やってくれたな、楊ゼン」


「貴様が馬鹿なだけだろう、ヴォルクルス」


「お前、自分から仕掛けておいてこのざまとは情けないな」


「ふざけるな、ぶっ殺してやる」


「死神と言われた僕を殺すとは面白いことを言いますね」


「行くぞ」


「いつでもどうぞ」


「メフィストフェレス、あなたもかかってきなさい」


「言われずともいくさ」


ヴォルクルスと楊ゼン、メフィストフェレスとロード・オブ・ナイトメアの二つの戦いが始まった。
ヴォルクルスは楊ゼンに魔力の炎を放ち、楊ゼンを牽制した。
楊ゼンは哮天犬をけしかけた。
ヴォルクルスは哮天犬の攻撃を何とかかわしたが、
楊ゼンが三尖刀で仕掛けた追撃をかわすことはできなかった。
ヴォルクルスは深手を負ったがそれでも楊ゼンに追撃を仕掛けた。
しかし深手を負ったヴォルクルスの攻撃は楊ゼンには届かなかった。
楊ゼンはヴォルクルスに追撃を加えようとしたが、
ヴォルクルスは残りの力を振り絞って魔力の炎を放った。
そのせいで楊ゼンは追撃を加えることができず、
ヴォルクルスは逃げ出した。
メフィストフェレスとロード・オブ・ナイトメアの戦いはそれぞれが魔術と魔法を使って牽制しあった。
しかしヴォルクルスと楊ゼンの戦いの勝負が決まり、メフィストフェレスは逃げ出した。
メフィストフェレスは魔力の霧を生み出し、楊ゼンとロード・オブ・ナイトメアの視界を奪って追撃をかわした。



『雷禅軍と女カ軍の戦い』



楊ゼン軍とヴォルクルス軍の戦いとは違い派手なぶつかりあいが連続した。
その被害もお互いに無視できないレベルになり、
お互い戦う気を失った。



『雷禅軍』


「雷禅、今回の戦い派手になったな」


「そうだな、ナタク」


「このままでは次の戦いに支障をきたすぞ」


「たぶん楊ゼンが勝つだろうけど、勝った勢いで攻めてくるだろうな」


「ああ、そうだな」


「ヴォルクルスは弱いからな」


「弱いくせに戦おうとするからな」


「そのせいでなお、楊ゼンに勢いをつけさせそうだな」


「もう少し善戦すると思ったのにな」


「これ以上戦いを続けるわけには行かないな」


「そうだな」



『女カ軍』


「楊ゼンちゃんの勝利はほぼ確定したようですわ〜ん、女カ様」


「まあ、あいつは弱いからな」


「時間稼ぎにもならなかったっわね〜ん?」


「この戦いもこれ以上戦いは継続できないな」


「じゃあ、和平を結びにいくの〜ん?」


「いくら雷禅でも和平は受け入れざるをえまいて」


「そうね〜ん?楊ゼンちゃんにこのまま仕掛けられたらきついだろうしね〜ん?」


「じゃあ行くかのぉ」



『和平会談』



「よく来たな、女カ」


「久しぶりよのぉ、雷禅」


「で、なんのようだ」


「知れたこと、和平の申し込みに来たんじゃよ」


「特に条件はないな」


「ああ、特にないぞぇ」


「じゃあ一週間後にお互い軍を引くということで」


「分かった」





こうして第二次魔界戦線は終わりを告げたが、次の戦いの火種はどこにでもあった。






〜記録フィルム終了〜






「次で最後になります」


「なかなか激しい戦いだったんだね」


「そうだよ、遠野君」


「じゃあ次を見ていただきます」






〜第三次魔界戦線記録フィルム〜






第二次魔界戦線から三ヵ月後、新たな戦いの火蓋がきって落とされた。
この戦いは雷禅軍と女カ軍は傍観していた。
楊ゼン軍はヴォルクルス軍の中枢に攻め上った。



『楊ゼン軍』


「ふう、ヴォルクルスのやつももう終わりだな」


「そうね、自分の身の程を知るべきだったわね」


「弱いというわけじゃあないが、戦いには向かないやつだったな」


「この戦いで四大勢力の一角が崩れるのね」


「そういうことだ。だが油断するな、ここは敵の本拠地だからな」


「そうね、ところで、どうやって攻めるつもりなの?」


「ここで、しばらく敵をひきつけておいて俺たちが直接乗り込む」


「何でそうするの?」


「ヴォルクルスの精神攻撃は厄介だからな」


「それもそうね」


「では行くぞ」


「わかったわ」



『ヴォルクルス軍』


「ここで死ぬわけには行かないな、メフィストフェレス」


「そうだな」


「ここで勝たねばならんな」


「ああ、敵が攻めてきたときに不意打ちをするしかないな」


「敵はもう攻めてきているな」


「もうすでにその対処法はできているさ」


「なら大丈夫だな」


「敵は2、3ヶ月ぐらいは足止めできるはずだ」


「では、罠を仕掛けておくぞ」


「頼むぞ」


「その必要はありませんよ」


「馬鹿な、楊ゼンどうしてここに」


「おやおや、あなた方が油断しすぎなんですよ」


「あなたたちは馬鹿なのよ」


「ふざけるな、ロード・オブ・ナイトメア」


「別にふざけてるわけじゃないわよ」


「ぶっ殺してやる」


「さあ、戦いを始めましょう」


「これで決着をつけさせてもらうぞ、ヴォルクルス」


「それはこっちのせりふだ、楊ゼン」


「ではいくぞ」


「ああ」


楊ゼンとヴォルクルスの直接対決が始まった。
先に仕掛けたのはヴォルクルスのほうだった。
ヴォルクルスは魔力の炎で牽制した。
楊ゼンはそれをかわし、ヴォルクルスに三尖刀で切りかかった。
ヴォルクルスは三尖刀の斬撃を紙一重でかわし、魔力弾を放った。
楊?はその魔力弾をそのままかき消して、哮天犬を放った。
哮天犬はヴォルクルスの牽制攻撃をたくみにかわし、ヴォルクルスに噛み付いた。
噛み付かれたヴォルクルスは、至近距離からの魔力弾で哮天犬を倒し、傷を回復させた。


「哮天犬を倒すとはなかなかやりますね」


「ふん、この程度で俺を倒せると思うな」


「倒せるとは思っていませんでしたが、それなりのダメージを与えられると思ったのですが」


「俺とて、ここで負けたら終わりなんだ。そう簡単には負けないさ」


「では続きをはじめさせてもらうぞ」


「第二ラウンドというわけだな」


「そうだな」


今度は楊ゼンが先手を取り、雪月で斬りかかった。
ヴォルクルスはその斬撃を紙一重で受けてしまい、魂の一部を切り取られた。
ヴォルクルスはその影響で動きが鈍くなり、楊ゼンの攻撃を受けやすくなった。
楊ゼンはその隙に連続で攻撃を仕掛け、ヴォルクルスを追い詰めた。


「これで終わりだな、ヴォルクルス」


「くっ、これで終わりか」


「そうだな」


「俺の散り様をよく見ておけ」


ヴォルクルスは自分自身に最大級の魔力弾を放ち自害した。


「ふう、俺もこれ以上生きておけないようだな」


メフィストフェレスも自分に魔力弾を放って自害した。


「ヴォルクルスもメフィストフェレスもやるわね」


「なかなかの散り様だったな」


「そうね」


「さてとこれで戦いは一段落着いたな」


「これからどうするの」


「とりあえず、これで三大勢力となったわけだな」


「そうよ、たぶんうちが一番の戦力になるわね」


「そうなるな、だが戦いとなると有利ではないだろうな」


「そうね」


「しばらくは戦いはないだろうな」





こうして魔界戦線は終わりを告げ、その後は魔界ではたいした戦いは起きなかった。





〜記録フィルム終了〜






「これで記録フィルムを終了させていただきます」


「なかなかの戦いね」


「それにしてもヴォルクルスとやらも大変だったな」


「この後も小競り合いが続いたからな」


「今の魔界はどうなっているの」


「さあ、しばらく戻ってないからな」


「まあ、いいけど」


「楊ゼン君はどうして学校に通っているんだよ」


「暇つぶしかな」


「そんな理由で」


「それに僕はまだ未成年だからね」


「そういえば、楊ゼン君はどうして無限転生者と呼ばれているんだい」


「その説明は僕がさせていただきます。
ご主人はご自身の体が人間界では大体人間の寿命と同じほどしか持たないので、
人間界ではこの一族で転生を繰り返させておられるのです」


「そういうわけなんだ、わかってくれたかな、遠野君」


「わかったよ」


「それじゃあ今日はこれくらいで帰らせてもらうよ」


「私も帰るわね」


「じゃあな」


「お疲れ様でした、お二方」


「じゃあ楊ゼン君、また明日」


志貴様と姫君がお帰りになった後、
僕は部屋の片づけをさせていただいた。
ご主人はご夕食をとられた後に僕に話しかけられた。


「MAGIU、まだ戦いは終わっていないことはわかっているよな」


「はい、わかっております」


「じゃあ、見回りは続けておけ」


「任務了解です」


この後、僕は少し見回りをした。
ここで本日の記録は終了させていただきます。






戻る  次へ