Fate/stay night
変わる運命
第十三話
間桐さんとライダーはもともと戦う気がないようなので勝敗は完全に決した。
今回の聖杯戦争の勝者はこの僕で決定だ。
聖杯であるアインツベルンのホムンクルスの様子を見ると、ほとんどの機能を停止しているようだ。
当然といえば当然でしょう。
「今回の聖杯戦争の勝者はこの僕ということで異議はありませんね、間桐さん」
「どうして私に聞くんですか、春日先輩」
「それはサーヴァントを連れたマスターが僕のほかにはあなたしかいないから、
あなたが聖杯戦争を降りるといえば僕が勝者になるからですよ。
なんなら僕がかなえる分の願いでライダーを受肉させてもいいんですよ」
「ライダーが残ってくれるならそれでいいです」
「じゃあ、教会にいって僕が勝者となったことを伝えましょうか」
そういうことで意見がまとまり(もっとも遠坂さんは反対といった感じだったけど)今後の方針が決まった。
衛宮君はセイバーを失った悲しみで茫然自失の状態だからキングに背負わせ、
アインツベルンのホムンクルスはライダーが背負って教会に向かおうと思ったところに、
「わざわざ教会に足を運んでもらうまでもないぞ。まさかギルガメッシュが敗れるとは」
という言峰神父の声がかかった。
自分のサーヴァントの様子をのぞき見ていたというところでしょう。
マスターとサーヴァントの関係なら、視界を共有すればいいだけのことですから。
「こんばんは、言峰神父。もはや戦力を持たないあなたでは何も出来ないでしょう。これからどうするのか教えなさい」
「その前にひとつ聞いてもいいか?」
「別にかまいませんよ」
「ギルガメッシュはお前を古代王と呼んでいたようだがそれはどういう意味だ」
「確かにそれは私も聞きたいわね」
遠坂さんが横から割り込んできた。確かに気になることでしょうから答えなくてはならないでしょう。
でもその前に衛宮君を元に戻してからではないと。
僕が衛宮君に気付けをして衛宮君にも状況を飲み込んでもらったところで僕について説明することにした。
「僕はかつてアトランティス大陸と呼ばれたところを支配していた王の転生体ということですよ」
「転生ですって!!それはあの蛇と同じことをしているってこと?」
「それは厳密に言えば違いますが大体のところでは一緒ですよ」
「遠坂、話に割り込むようで悪いんだが、蛇って何のことだ?」
「その質問には僕が答えましょう。僕のほうが多少詳しいですから。
蛇といわれるのは死徒二十七祖番外ミハイル・ロア・バルダムヨォンのことですよ。
彼は他人の体をのっとりそれを繰り返すことによって永遠の命を手にしようとしたものですよ。
僕と彼の違いは、僕は毎回まったく同じ能力を持っていますが、彼は転生先によって能力が違うことが第一です。
第二に僕の場合は最初から僕の意識だけですが、彼の場合は転生先にほかの意識があったということですね」
「それはどう意味かよくわからないんだけど」
「僕の場合は死んだ瞬間に赤ん坊に戻ってやり直しで、彼の場合は死んだらどこかの赤ん坊に取り付くという感じですよ」
「ところで春日君、蛇はその転生先を選ぶらしいけどあなたはどうなの?」
「僕の場合は完全にランダムですよ、転生までの期間を含めて」
「蛇についての話はこれまでにしてもらおう。春日隼人、お前は聖杯に何を願う?」
「とりあえずライダーの受肉ということで、キングとキャスターのどちらがサーヴァントとして願いをかなえるのかは知りませんけど」
「それでいいのだな。もし望めは貴様が国を治めていた頃のやり直しも出来るのだぞ」
「やり直す意味がありません、僕の国は海に沈む運命にあったんです。
戦争とかではないんだから変えようがありませんから。
この運命ばかりは僕の宝具でも断ち切れませんから」
「そうか。やり直しは望まないということか」
「望まないというよりは望めないというべきでしょう。また同じ結果にしかならないんですから」
「では聖杯を降ろすのなら柳洞寺について来い」
こうして僕たちは柳洞寺に向かった。