Fate/stay night
変わる運命
第十四話








僕たちは今回の聖杯の降霊場所である柳洞寺へと向かっている途中にも僕についての話をした。





「春日君、アトランティスってどういう国だったの?」



「一言で表すのならば戦争のない国ですよ」



「そんな国が長続きするとは思えないわ」



「確かにそうかも知れませんが、実際のところ僕の統治は2000年程でしたよ」



「でもあなたの次の世代はどうだったのかしら?」



「それこそ意味のない質問ですね、アトランティスは僕の代で海に沈んだんですから」



「ごめんなさい、余計なことを聞いたみたいね」



「別にかまいませんよ」





確かに遠坂さんのいうことも考えるべきことだったのでしょうね。
この僕一代だけの国ではだめですからね。
跡継ぎというものをまったく考えなかったのもアトランティスが滅んだ原因のひとつなのかもしれませんね。
その後は僕に仕えてくれた騎士たちの話などをした。





そうこうしている内に柳洞寺へとたどり着いた。
これで今回の聖杯戦争は完全に終幕になる。
とはいえ、僕は本人たちがキングとキャスターが受肉を願わなければこれからも使い魔として現界させ続けるつもりですが。
それでは聖杯の降霊に入るとしましょう。





「言峰神父、今回の聖杯はアインツベルンのマスターの心臓なのでしょう」



「そのとおりだ、春日隼人」



「一応聞いておきますが、アインツベルンのマスターは聖杯を降ろす時に死にますか?」



「そのときには死なないだろうが、その後、門を維持している内に死ぬであろう」



「聖杯とは根源の渦につながる門なのですか?」



「そのとおりだ」





そうだとするとあらゆる願いがかなうというのもうそとは言い切れませんね。
最もそれだけの魔力があるというだけで使いこなせなければ意味がないのですが。
先の言峰の台詞に遠坂さんはとても驚いているようだし、衛宮君はアインツベルンのマスターを犠牲にすることがいやという感じかな。
本当に衛宮君は甘すぎる。
彼女が人間ではないと理解できたでしょうに。





「イリヤを犠牲にしないと手に入らない聖杯なんてだめだ、解ってくれるだろう、隼人」



「その質問は僕ではなく、間桐さんとキャスターとキングにすべきですよ」



「衛宮先輩がだめだというのなら私はライダーの受肉をあきらめます」



「われはもとより聖杯に興味はない」



「私はこの世界に残れればそれでいいわ」



本当にみんな甘いというかやさしいな。
それなら僕にもやらなきゃいけないことが出来たな。





「そういうことらしいので、死んでください言峰神父」





僕はそういって言峰神父を切った。
なぜならば聖杯を持つにふさわしいものがいなければ彼が願うといったからだ。





「春日君、綺礼を殺す意味はあったのかしら?」



「まさか遠坂さんに反対されるとは思っていませんでした」



「別に綺礼を殺したことについてとやかく言うつもりはないわ、ただ理由を知りたいだけ」



「彼が聖杯を降ろすつもりだったからと、彼はすでに死んでいたからですよ」



「綺礼がすでに死んでいたってどういうことよ?」



「彼の心臓は人間のそれではありませんでしたから、いつ死んだのかは知りませんけど」





とりあえずはこれで一件落着。
これからは僕が魔力を与えるという形でキング、キャスター、ライダーを現界させることになった。
まあ、メンバーは多少変わってもこれからもしばらくは平穏な日々が続くだろう。
天下泰平こともなし、これが一番です。






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