Fate/stay night
変わる運命
第十話
バーサーカーとの戦闘から一晩たった。
バーサーカーのマスターはいまだ眠ったままだ。
キャスターに調べさせたところ彼女はホムンクルスのようだ。
そして彼女の心臓が聖杯として機能しているらしい。
アーチャーは彼女が目的だったということか。
そんなことはまあどうでもいいことだけど。
とりあえずセイバーとの最終決戦が最優先課題だ。
今のところたいした被害も出ていないのでこのまま聖杯戦争が終わればいいのだが。
そのためにもセイバーとの決着をつけてアーチャーをどうにかしなくては。
そのために作戦会議をすることにする。
「わかってはいると思いますが、今晩セイバーとの決着をつけます」
「セイバーの相手はわれということでかまわぬな」
キングの意見は当然だ。
小次郎がいた頃ならまだしも今戦えるのはキングか僕だけだし、僕はあまり戦いたくないのだから。
「当たり前です。もしほかに戦いに来るものがいるとしたらそちらの相手は僕がしましょう」
「マスター、私は何をすればいいのでしょうか?」
「キャスターには衛宮君をおびき出すのと遠坂さんと衛宮君の動きを封じることをやってもらいます。もしかしたら間桐さんも」
「わかりました」
キャスターは納得しがたいところがあるのだろうが。承諾してくれた。
キャスターではセイバーの対魔力をこえることはできないだろうし、騎士同士の決闘を邪魔するのはよくない。
それにマスターから死人を出したくないし。
「決戦は今夜。場所は新都の公園。前回の聖杯戦争の決着の地です」
「了解した」
「わかりましたわ」
とりあえず僕が戦う可能性があるのはアーチャーかライダーさんということだ。
アーチャーなら確実に倒すが、ライダーさんは間桐さんのためにも殺したくない。
となると長期戦になる可能性も高いが、それは避けたい。
となると何とかして動きを封じる必要がありますか、まあ手足の一本なら問題ないでしょう。
アーチャーが出てきた場合は宝具を使えばいい。
この僕の宝具のコピーにしてキングの宝具の原型もあったが、僕の宝具の前では無力に等しい。
僕の宝具の前ではAランクの宝具が束になろうとも障害にすらなりえないし、どんな盾でも貫通できる。
その分消費する魔力も半端ないですし、周りに被害が出ないように結界も張らないといけないけど。
まあ切り札をとっとと使うのもなんですし、風の魔術か何かで様子を見ながら宝具を使うなら使うといったところですね。
キングのほうは問題ないでしょうセイバーは搦め手を使うような人物には見えなかったし。
正々堂々の勝負に戦力というものはあまり絡みませんから。
要は実力しだいということ、後は戦術でしょうが、それは戦いながら考えるものだ。
そしてそれぞれの方法で精神統一などをした後、新都の公園に向かった。
一応バーサーカーのマスターもつれてきてはいる。
彼女は聖杯だし、アーチャーがねらっているようだから。
それから以前と同じように衛宮君をおびき出した。
同じ方法で二度もおびき出せるとは、衛宮君の対魔力はないに等しいですね。
とりあえずもうすでに動けなくなっているようですし、少し話をしましょうか、セイバーが来るまで。
「こんばんは衛宮君。こちらの都合で勝手に呼びたてて申し訳ないのですがこれで最終決戦ということにさせてもらいます」
「ランサーとバーサーカーはどうしたんだ?」
「ランサーもバーサーカーも倒しましたよ。バーサーカーのほうマスターがそこにいますし」
「イリヤは無事なのか?」
「僕は彼女に何も危害は加えていませんよ」
衛宮君らしい意見も聞けたし、そろそろセイバーもくるでしょうから会話はこれまで。
それにしても衛宮君は、優しすぎるというか、敵に対して情けをかけすぎです。
彼女と戦ったと予想されますが、それなら彼女の危険性はわかるでしょうに。
そんなことを考えているうちにセイバーがきた。
もう少しすればほかの人たちも来るだろう。
「シロウ、無事ですか?」
「大丈夫だ」
「マスターの心配をするのも大事だが、目の前の敵たるわれの存在を忘れてくれるなよ」
「キング、十年前の決着ここでつけたいらしいな」
「そのとおりだ、来いセイバー」
セイバーとキングの戦いが始まった。
これは前回と同じく膠着状態になるだろう。
それからすぐに遠坂さんたちも来た。
「こんばんは遠坂さん、間桐さん、ライダーさん」
「こんばんは春日君」
「こんばんはです、春日先輩」
「こんばんは、ハヤト」
「今はセイバーさえ倒せればいいので戦いたくない人はおとなしくしていてくださいね。衛宮君に危害を加える気もありませんし」
ライダーさんは戦う気がないようだ。
間桐さんにとってはセイバーは邪魔ということか。
遠坂さんは戦う気の様なのでキャスターに動きを封じさせた。
キングとセイバーの戦いは予想通り膠着状態になり決着はまだ先だろう。
それまではやることもないし衛宮君たちともう少し話をしましょうか。
「衛宮君たちは聖杯が手に入ったらどうするつもりなんですか?僕は聖杯を出現させる気もありませんが」
「俺はセイバーが必要としているから手に入れるだけで、俺がどうこうすると言うことはない」
「私はライダーを受肉させます」
「私にはもう関係ない話になっちゃたけど、春日君、あなたはもし聖杯が手に入ったらどうするつもりなのかしら?」
「キャスターを受肉させます」
別に受肉させなくてもサーヴァントとして維持するのもたやすいでしょうからどちらでもいいのですが。
あえてするとしたらということですか。
そういえばアーチャーを倒せば聖杯は出現できるんですよね。
そんなことを考えているとアーチャーが乱入してきた。
結界を張りなおさなくてはいけなくなった。
乱入してきたアーチャーの最初のせりふは、
「久しいな、セイバー。我の決定を覚えているか?」
「アーチャーどうしてここに!」
「十年前から現界し続けているからに決まっておろう」
僕はこの間作っておいた体を成長させる薬を飲み、鎧を装備して、戦う準備と整えた。
それには遠坂さんたちも驚いているようだ。
「アーチャー、あなたには悪いですが、先にこの僕の相手をしていただきます。騎士の決闘の邪魔をするなんて無粋すぎますよ」
「ほう、征服王のマスターか。変わった魔術を使うようだが雑種風情が我に挑もうとは、愚か過ぎるぞ」
「それはどうでしょうか」
そうして僕とアーチャーの戦いも幕を開けた。