Fate/stay night
変わる運命
第九話







ランサーを倒してから一晩過ぎた。
今日やるべきことはバーサーカーの位置と前回のアーチャーの真名を探ることだ。
バーサーカーについてはキャスターに任せておけば問題ないだろう。
問題は前回のアーチャーだ。
キングは互角の戦いをしていたが、アーチャーの真の宝具もあるだろうし、気は抜けない。
いざとなれば僕も戦わなくてはならないかもしれない。
そのときのためにあるものを準備しなくてはならない。





あるものは準備のために午前中いっぱいかかってしまった。
とりあえず昼食を食べながら作戦会議をするとしよう。
キャスターがバーサーカーの位置を探れていればいいのですが。





「とりあえずはそれぞれの報告を聞きましょう。まずはキャスターから」



「マスター、バーサーカーは郊外の森を拠点としているようです。私の使い魔も侵入できませんでした」



「われわれ二人は特に報告することはないな。アーチャーの真名もわからない」



「わかりました。ではアーチャーの真名をみなで考えるとしましょう。アーチャーの使っていた武器に心当たりはないですか?」



「心当たりはマスターもあるのではないか。貴公の宝具の贋作たるわが宝具の原型があったのだから」





キングがすぐにそう返してきた。チラッと見ただけだったけどやはり見間違えではなかったか。
だがそれはどういうことなのだ。
この僕の宝具やその贋作たるキングの宝具もほかの担い手はいないはずだ。





「マスター考え中のところすいませんが、アーチャーはギリシャ神話由来の宝具もいくつも持っていました」





キャスターからもそういう意見が出た。
なおのことわからない、あれだけの数の宝具を持っている英雄などいるのだろうか。
やはり宝具の偽物と考えるのが妥当だろう。





「ということはアーチャーの宝具は偽物ということですか?」



「それはありえぬな。偽物ごときに我が軍は苦戦しない」



「となるとすべても宝具は本物と言うことですね。ならあれだけの宝具を所有している英雄に心当たりは?」





それについては誰からも心当たりは出なかった。
とりあえずアーチャーについては保留ということでバーサーカーを倒すことにする。
郊外の森ならかなりの時間がかかるだろうから早々に出かけるべきだ。
バーサーカーがいかなるサーヴァントであるにせよ敵の本拠地に乗り込む以上奇襲や罠というものにも気をつけなくては。
バーサーカー戦の後はできるだけ早く衛宮君と決着を着けたい。
だからバーサーカー相手に戦力を使いすぎるわけにはいかない。
そんなことを考えているうちに郊外の森に着いた。
森にはキャスターの報告どおり結界が張ってあったようだがそれは無理やり破られていた。
おそらくアーチャーだろう。
これは好都合だバーサーカーが勝つにしろアーチャーが勝つにしろ多少は消耗するだろうし勝者の宝具を見ることができるかもしれない。
そういうことで僕たちはアーチャーの気配がするほうに急いだ。
まだアーチャーが森に進入してから30分と経っていないはずだ。
急げば追いつけるはず。
そうしているうちに城が見えた。
アインツベルンはあんなものを持ってきていたのか。
中では戦闘が始まったようだ。





「キング、あなたの軍で城を攻めなさい。奇襲ならあのアーチャーも倒せるかもしれません」



「まあ、仕方ない」





キングは乗り気ではないようだが宝具で城攻めを始めた。
その後ろから僕たちも続いて城に入った。
そこでは予想通りの戦闘が行われていた。
キングの軍のせいでバーサーカーからキングに標的を移したアーチャーと
かなりの傷を受けてそれを直しているのだろうバーサーカーと思われるサーヴァントがいた。
バーサーカーは規格外だ。
単純な戦闘能力ならサイバーすら上回っているだろう。
それにあれだけの宝具を受けながら生きているというのはありえない。
よく見ると生きているのではなく、死んでから蘇生しているようだ。
バーサーカーの奥にいる少女がバーサーカーのマスターだろう。
とりあえず一時的に協力することができるかもしれないので話しかけてみよう。





「こんにちは、あなたがバーサーカーのマスターですね」



「そういうあなたはキャスターのマスターね。わざわざ死ににくるなんて愚かね、やっちゃいなさいバーサーカー」



「交渉の余地すらなしですか。仕方ないですね」





キャスターと小次郎がバーサーカーとの戦闘に入った。
キャスターの魔弾も小次郎の剣もバーサーカーにはまったくダメージを与えていないようだ。
果てさて厄介な相手だ。
バーサーカーのマスターはよほど余裕なのか話しかけてきた。





「あなたが何体サーヴァントを連れていても無意味よ。私のサーヴァントはギリシャ最高の英雄なんだから」



「ヘラクレスですか」



「そうよ、バーサーカーにはBランク以下の攻撃なんて効かないんだから」



「さらに蘇生魔術の重ねがけまであるというわけですか、確かに厄介ですね。その上まで狂化してないでしょう」



「そうよ、バーサーカーはまだ3回殺さないと死なないんだから。それに遊びは終わり、狂いなさいバーサーカー」





バーサーカーが狂化され、こちらが劣勢になった。
後ろでのキング対アーチャーは昨日と同じく膠着状態になっている。
それにしてもアーチャーは何の目的でここにきたのだろうか。
バーサーカーを倒すためには小次郎に犠牲になってもらうしかない。
僕は今は戦えないし。





「小次郎、ここで犠牲になってください。キャスター打てる最大の魔弾をバーサーカーに叩き込みなさい」



「それしか手がないか。まあよい、なかなか楽しかった」



「了解しました、マスター」





キャスターは魔力の充填を始め、キャスターを狙おうとするバーサーカーを小次郎が全力で抑えている。
キャスターの魔力の充填がほぼ完了したときに小次郎は燕返しを放った。
しかしそれでもバーサーカーにダメージを与えることはできなかったがバーサーカーを防御不能の体制にした。
そこにキャスターの最大威力の魔弾が炸裂した。
そして爆発の煙が晴れた後には小次郎は死体すら残っていなかった。
バーサーカーは確実に死んでいた。
もう蘇生はできないようだ。
それを見たアインツベルンのマスターは突然糸の切れた人形のように倒れた。
さすがにそれをほうっておくのは気が引けるのでつれて帰ることにする。
今回はここで撤収ですね。
このまま戦いを続けることができるのはキングだけですし、
そのキングにしてもアーチャーとの決着は早々つかないでしょう。





「キング、今回もひきますよ、イレギュラーは放っておきなさい」



「また決着を着けずに撤退か、まあ仕方ない。ではまた会おうアーチャー」





そして僕たちは撤退した。
今回の戦いで小次郎を失ったのは大きな痛手だ。
もしセイバーとの戦いでライダーも参戦してくるようなら僕が戦わなくてはならなかった。
さすがはギリシャ神話最高の英雄あれだけのダメージを追いながらでも一筋縄ではいきませんでしたか。
セイバーとの決着は明日着ける。
アーチャーも出てくれば今度は倒す。
すべては明日だ。






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