Fate/stay night
変わる運命
第六話
衛宮君たちと戦うことになっている日になった。
その日もいつもと変わらずに授業を受け、そして夜になった。
間桐さんとは海浜公園で会うことになっている。
まずは防音等の結界を張った。
衛宮君とは出来る限り正々堂々と戦いたいので、こちらが有利になることはやりたくない。
確かにおびき出してから戦うという時点で正々堂々ではないのだろうがそれでも戦いだけは正々堂々とやりたいのだ。
そうこしているうちに間桐さんとライダーさんが来た。
こちらから別に話さなければならないこともないし、衛宮邸に遠坂さんが滞在していることも間桐さんも話で分かっているのだ。
後は衛宮君をキャスターの魔術でここに呼ぶだけだ。
それで100%来るのはセイバーだけだろうがそれならそれで小次郎とライダーさんが間桐さんを連れて衛宮邸に向かうことになっているのだ。
キャスターが衛宮君を呼ぶ魔術を使うとセイバーがそれに気づいたのだろうこちらに向かってくる。
その後に続いて遠坂さんも来ている。
こちらが予想していた最高の展開だ。
これなら最低でもアーチャーは倒せるだろう。
まずは衛宮君が到着した。
それにしてもこうも簡単に魔術に掛かるとは情けない。
とりあえず話をするとしましょうか。
衛宮君もまったく状況を理解していないようですし。
「こんばんは、衛宮君。いい夜ですね」
衛宮君は動揺しているようだが「ああ、そうだな」と返事をした。
「こんなに戦いに向いた夜はないと思いませんか?」
この言葉で衛宮君もこちらの意図を理解したのだろう。
「どういうつもりなんだ、なんで桜がそこにいるんだよ!」
その意見に対して返事をする前にセイバーがやってきて、衛宮君に対して掛かっていた魔術を解いた。
本当にせっかちな人だ。
しかもこちらが話そうとする前に斬りかかって来た。
その辺も予想通りといえばそれまでなのだが。
やや遅れて遠坂さんも来た。
これで戦闘はセイバー対キング、アーチャー対小次郎とライダー、僕対遠坂さんという感じになっている。
まあ僕自身あまり戦いたくないとはいえ遠坂さんの相手は僕がすべきだろう。
これくらいで自滅するようでは洒落にもならないし。
それに別のサーヴァントときのためにキャスターが動けるようでないと、まずいから。
間桐さんは衛宮君に状況を説明していて戦えそうにないし。
さて遠坂さんとはどうやって戦うべきか。
やはり魔術戦ですかね。
とりあえず話しかけてみますか。
「こんばんは、遠坂さん」
それに対して遠坂さんはいつもの笑みとは違う悪魔のような笑顔で返事をした。
「こんばんは、春日君。いい夜ね」
そうして間髪いれずにガントを放ってきた。
これはとても話など出来ないな。
仕方ない、ガントをよけながら時間を稼ぐか。
少しほかの戦いの様子も見てみよう。
セイバー対キングは一進一退の攻防が続いているが若干キングのほうが有利みたいだ。
セイバーのほうは魔力の供給がないのだろうか、魔力の無駄遣いができないようだ。
その差が出ているのだ。
とはいえほとんど差がないのだからいつ形勢が逆転してもおかしくない。
それとは違ってアーチャー対小次郎とライダーさんは圧倒的にこちらが有利だ。
二対一ということもあるがアーチャーの戦闘能力はあまり高くないようだ。
それでもそれを補って余りある経験があるからいまだに持っているみたいだ。
こちらも要注意といったところか。
それにくらべて衛宮君と間桐さんは状況を話した後普通に雑談をしているとは情けなさ過ぎです。
それを見た遠坂さんが「何やっているのよ、士郎は!!」とか言いながら僕により激しくガントを打ってくるではないですか。
僕に八つ当たりをしないでもらいたいですね。
間桐さんもまるで遠坂さんが宣戦布告したみたいに言うこともないと思いますが、それも女心なのでしょう。
そろそろ戦いに集中しないとまずくなってきたな。
〜セイバー対キングside〜
キングがだんだんと押してきた。
セイバーはそれまでは防げいた攻撃が防ぎきれなくなってきている。
少しずつではあるがセイバーはダメージを負っているようだ。
それでもセイバーとキングの剣舞の終わりは見えない。
お互いに剣を合わせながら相手を倒すチャンスを窺っている。
ゆえにお互い気を抜けない戦いになった。
セイバーも後のことはあまり考えてないのか魔力の使い方に遠慮がなくなった。
それで形勢は再び振り出しに戻った。
この戦いはお互いの宝具がものをいうだろう。
しかしこの戦いは決着がつかずじまいになった。
〜アーチャー対小次郎とライダーside〜
こちらの戦いは最初から決まっている結末へと向かうものとなった。
ライダーは割りと様子を窺うという感じが強い性格なのだが、今回の戦いには気合が入っているようだ。
それもマスターのやる気が高いからなのだろうが、そのマスターは和んでいる。
そんなことはお構いなしに状況は刻一刻と変わっていく。
ライダーがダガーでアーチャーを捕らえて、小次郎が袈裟懸けに斬ったのだ。
決着はついた。
小次郎がアーチャーを袈裟懸けに斬った時点で勝敗は見えたのだ。
さらに追撃を加えようとする小次郎に対抗しようと遠坂さんが令呪を使うつもりなのだろうが、僕がそんなことはさせない。
「アーチャー消えな、っ!!」
遠坂さんの令呪が完全に発動する前に僕が遠坂さんを蹴り飛ばした。
そして、アーチャーは小次郎の追撃を受け、完全に死んだ。
アーチャーがこの聖杯戦争のおそらく最初の脱落者となった。
そして小次郎とライダーさんはセイバーのもとへと向かった。
それに気づいたセイバーは宝具を開放するようだ。
セイバーさんの剣が光り始めた。
アレは危険だ、今回はここまでにしておくべきだろう。
「キング、小次郎、ライダーさん、今回はこれで引きましょう」
三人ともセイバーも宝具の危険性は承知していたのだろう三人とも戻ってきた。
そこに間桐さんも戻ってきたので今回の戦闘はこれで終わりだろう。
それに対してセイバーは少し不服なのだろうが自分が置かれている状況は理解できているようだ。
遠坂さんは混乱しているようでもあり、この状況を受け入れたくないようでもある。
「遠坂さん、あなたの負けですよ」
僕はそう宣告した。
「どうして、桜とあなたが共闘してるのよ、春日君!!」
それに対していかにも納得できないという返事が返ってきた。
確かにその質問はしておきたいだろう。
僕にはそれに対してきちんとこたえる責任があるだろう。
「それはあなたを倒すためですよ、遠坂さん。だから共闘もここまでです。まあ、間桐さんはもう戦う気がないようなので放って置くつもりですが」
「ふざけないでよ、聖杯戦争はサーヴァントが一体になるまで続く戦いなのよ、アンタそれを分かっているの!!」
遠坂さんは激昂しているようだ。
それも分からなくもないが僕は聖杯戦争を戦い抜こうとしているものを倒そうと思っているわけで、聖杯がほしいわけではない。
それはキングも小次郎もキャスターも納得している。
僕には聖杯でかなえたい願いなどない。
僕の魔法を完璧にするというのは少し研究すれば出来るし、過去に戻るなんてこともやりたくない。
「それは聖杯を手にする方法でしょう。僕はこの戦いを勝ち抜きたいのであって聖杯が欲しい訳ではありませんから」
それに対して遠坂さんの怒りはさらに上がったようだ。
「ふざけんじゃないわよ!!じゃあ、あんたたちは目的もなく戦っているというの!!」
「目的は勝ち抜くことですよ、それに聖杯なんかに頼らなければならないほどの願いなんてありません」
この返事に対して遠坂さんはあきれているというよりは納得したという感じになった。
やっと怒りがさめたようだ。
「そういう訳ね、あなたは父親の代わりに聖杯戦争を勝ち抜くつもりだったてことね?」
「そうですよ」
まあ、そういうことなのだ。
親の遺志を子が継ぐのは当然だ。
この肉体は今の両親からもらったものなのだ、たとえ魂はそうでないとしても。
それより気になることがある。
「遠坂さん、あなたはこれからどうするつもりですか?」
「この聖杯戦争を見届けるわよ、衛宮くんの家に滞在して」
その返事に対して衛宮君と間桐さんが驚いている。
僕としては予想通りといったところでしょう。
これで衛宮君の魔術の腕が上がるとより楽しめるでしょうね。
「何いっているんですか、遠坂先輩」
「そうだぞ、遠坂。教会に保護してもらったほうがいいんじゃないか?」
やっと正気を取り戻した間桐さんと衛宮君が反論したが、遠坂さんはそれを却下した。
まあ、あの教会に保護してもらうのは危険だろう。
それに対抗して間桐さんも衛宮邸に泊まるということにいつの間にかなっていた。