Fate/stay night
変わる運命
第三話







僕たちは冬木教会に向かって進み始めた。
別段会話もなく進んで言って小一時間ほどで教会についた。
教会についてキャスターが言った。



「マスター、私たちはここに残ります」


「まあ、僕がどのサーヴァントを連れているのか他人に知られるのは得策とはいいがたいですからね」


「なら、春日君はどうして私にキャスターのマスターだということを教えたのかしら?」



遠坂さんが睨んでいる。これは赤い悪魔というのにふさわしいですね。
僕にとっては遠坂さんが衛宮君の家に来たことの方が意外なのですし、遠坂さんは搦め手を使うような人ではなさそうっだったからだったからなんですけど。
それを言うわけにはいきませんよね。さらに遠坂さんをおこらせるだけでしょうから。
果てさてどう答えるべきか。



「フェアじゃないと思ったからですかね」


「そんな理由なんだ」


「衛宮君にキャスターたちを見せたのはハンデのつもりですけどね」


「私ではキャスターに勝てないといっているのか、キャスターのマスターよ」


「セイバーさんは搦め手を使えばいかようにもなると思っていますよ。それにキングもいますしね」


「そんなことはどうでも良いわ、さっさと教会にいきましょう」


「そうですね」


「お、おぅ」



衛宮君は多少緊張しているようですね。
冬木教会の神父とやらはどのような人なのか。
出来れば分かりやすい人だといいのですが。



僕たちはサーヴァントを残して教会の中に入った。
この教会の雰囲気はまずい。
ここは人の死に満ちている。
さっさとことを済ませて帰りたいですね。



「遠坂、ここの神父さんってどういう人なんだ?」


「私の兄弟子にして師匠よ」


「代行者ですか」


「そうよ」


「名前は言峰綺礼 、出来れば会いたくないような人間よ。あんな兄弟子なんか持ちたくなかった」


「同感だ、師を敬わぬ弟子など持ちたくなかった」


「貴方がここの神父ですか?」


「そうだ、私がこの聖杯戦争の監督者だ、春日の子よ」


「どうして僕のことを知っているのですか?」


「貴様の父親を知っているからだ」


「ということは、貴方も父上と同じく前回の参加者ですか?」


「そういうことだ」


「ちょっと待ちなさいよ、私はそんなこと聞いてないわよ」


「聞かれなかったから答えなかっただけだ」



遠坂さんは大変おこっているようですね。
でも自分で確認ぐらいしておくべきですよ。
僕だって衛宮君の父親が前回のセイバーのマスターだということは知っているというのに。
それに衛宮切嗣は父上を殺した張本人ですし。



「そんなことより聖杯戦争ってどういうものなんだよ」


「凛、こいつが七人目か?」


「そうよ、彼が最後のマスターの衛宮士郎よ」


「そうか、衛宮。礼を言おう衛宮士郎よ、このようなことでもなければこれはここには来なかった」


「さっさと聖杯戦争の説明をしなさいっていっているでしょう」



こうして神父さんの説明が終わり衛宮君が参加表明した。
これで聖杯戦争は正式に始まったのだ。
僕たちは教会から出た。
衛宮君がセイバーに参加する意思を伝えた。これで僕にとって衛宮君は敵になったのだ。
僕はこれ以上関わる訳にはいきませんね。
僕は父上の代わりに勝ち残らないといけませんしね、たとえかりそめの親だとしても。



「では僕たちはこのあたりで失礼させていただきます」


「隼人、なんでさ?」


「僕と衛宮君はこれからは敵同士なのですよ」


「俺はお前や遠坂とは戦いたくない」


「そういってもらえるとうれしいですが、僕も父上のためにも勝ち抜かなければならないのですよ。では次に夜に会ったときまでに覚悟を決めてくださいね」



僕はそう言って、キャスターの転移魔術で家へと戻った。




〜士郎Side〜




「遠坂はどうするんだ?」


「私も敵になるわよ、でも冬木大橋までは一緒に行くわよ」


「そうか」


「そうよ、貴方はどうか知らないけど、私はこのときを待っていたのよ」



俺たちは静かに歩いて冬木大橋に向かった。
セイバーやア−チャーたちが英雄と呼ばれたものだったなんて思いもよらなかったけど、セイバーとならうまくやっていける気がする。



「ところで、セイバーたちは聖杯がほしくて聖杯戦争に参加したんだよな」


「そうです、マスター私には聖杯を欲する理由がある」


「ところでそのマスターって言うのはやめてくれないか」


「分かりました、ではシロウと」


「ああ、それで良いと思うよ。ところで、アーチャーにも聖杯でかなえたい願いがあるんだろう?」


「いや、私には聖杯でかなえる願いなどありはせんよ」



こいつ初めて会ったときから思ったことだけど気に入らない。
こいつはまるでセイバーの願いまで否定しているみたいだ。


「アーチャーには願いが無いのですか?」


「そういうわけではないが聖杯でかなえるようなものではないということだ」


「キャスターもそんなこと言ってたな」


「そういうことだ、衛宮士郎。別に聖杯でなければ願いがかなわないというわけではない」


「私も勝つことだけが目的だしね。じゃあ衛宮君私はこのあたりで新都に戻るわ、探し物があるもの」



遠坂も大変だな、俺もこんな戦いに巻き込まれたんだよな。
セイバーの足手まといにならないようにがんばらないとな。
俺は遠坂や隼人のように一流の魔術師じゃないからな。
遠坂は一流の魔術師の上に優しいからな。



「ありがとうな、遠坂。俺はお前みたいなやつは好きだ」


「はぁ?衛宮君、何がいいたいの?」


「ここまで送ってくれたんだろ、だからそのお礼だ」


「衛宮君、何か勘違いしてるようだから言っておくわ。私は貴方を勝たせるために教会に連れて行ったんじゃないわよ。貴方が生き残れるようにしただけよ」



遠坂は本当にやさしいんだな。学校では猫をかぶっていたんだろうけど、やっぱり遠坂は遠坂なんだな。
俺は遠坂とは戦いたくないな。
隼人ともそうだけど。



「それでもお礼を言うのは当たり前だろ」


「分かってないわね。これから聖杯戦争が終わるまでは私や春日君のことを同じ人間だなんて思っちゃだめなのよ。」


「じゃあ、遠坂はどうして俺を教会まで連れて行ってくれたんだ?」


「私のは余裕よ、衛宮君は私の敵ですらなかったから」


「ねぇ、お話は終わり?」


「誰だ!」


「こうして会うのは二度目だね、お兄ちゃん。私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。じゃあ、殺すね。やっちゃえバーサーカー」



やばい、アレは化け物だ。俺なんか一瞬で殺されてしまう。
セイバーやアーチャーとでさえ比べ物にならない。



「シロウ、下がってください」



セイバーがバーサーカーの攻撃の落下点へと向かった。
セイバーのような小柄な女の子にあの攻撃が受け止められるとは思えない。
俺はセイバーに守ってもらわないと何も出来ないのか。



セイバーはバーサーカーの剣を受け止めた。
でもいつまでも受けていられるようなものじゃない。
セイバーならアレから逃げることも出来るはずだ。
それなのに逃げないのは俺がいるからだ。
俺はセイバーの脚をひっぱているのか。



「アーチャー、援護!」



遠坂がアーチャーに命令して援護させたが、バーサーカーにはまったく効いていない。
アレは異常だ、俺がどうにかできるものじゃない。
俺はセイバーがやられるのを黙ってみているしかないのか。
セイバーのやつ、だんだん押され始めた。
このままじゃ、あいつは殺されてしまう。
俺はそれを見逃すことなんか出来ない。



「セイバー!!危ない」


「ガハッ」



俺は間に合わなかったのか。
だからこの身を盾にすることしか出来なかったんだな。
俺もこれで終わりだな。
もう意識が途絶える様だ。





〜隼人Side〜





僕はキャスターの空間転移で家へと戻った。
これからキャスターたちに今日あったことなどを説明しなきゃいけないな。
はてさてどうしたものか。



「マスター、いろいろ説明していただきたいことがあるのですが」


「我もマスターに聞きたいことがある」


「ではどこから説明しましょうか。まず僕の名は春日隼人です」


「では隼人と呼ばせてもらおう」


「それでかまいませんよ、別に名前に深い意味があるわけではありませんし」


「では、隼人よ、この結界は何だ、それに貴様はキャスターの操り人形ではないのだな」


「前者の質問は見てのとおりですし、後者の質問は否ですよ」


「こんな結界はサーヴァントでさえ張る事は出来ないぞ、そのあたりを説明しろ。それに貴様は二体のサーヴァントを同時に使役できるほどの魔力を持っているのか?」


「ふぅ、質問はひとつずつにしてほしいですね。前者はサーヴァント以上の神秘で可能になりますし、後者は是ですよ」



さすがはセイバーとして呼ばれただけはある。
これほど的確に情報を把握できることは大変すばらしいことだ。
そういえばこいつは父上が連れていたサーヴァントと同じなのでしょうか。



「アナタの真名はなんですか、キング」


「ほかのサーヴァントがいる中で答えよというのか」


「私たちの真名も明かしてもかまわないわよ」


「それならいいだろう、我は征服王イスカンダルだ」


「私はコルキスの魔女メディアよ」


「私は佐々木小次郎」



やはり父上が連れていたサーヴァントでしたか。
当然といえば当然ですね。
僕と共にいた騎士たちは呼ばれることはないですし。



「彼の征服王と共にいられるとはうれしいことですね」


「われのマスターであることを光栄に思うが良いぞ。貴様はおそらく超古代の魔術師の転生体であろうが我ほどの知名度はあるまい」



確かに僕の国は有名ですが、僕のこと自体は今となってはまったく伝説すら残っていません。
しかし征服王が生きた時代ならば僕も有名です。



「マスターは彼のアトランティスの古代王よ」


「まさか、しかしそれも当たり前か、よもやわが宝具の原型ともいえる武器の担い手に出会えるとはな」


「それよりこれからのことをどうするかが今話さねばならないことですよ」



僕の力を見せるつもりは毛頭ありませんが、もしもの場合は考慮に入れて置かねばならないでしょう。
セイバーとして呼ばれた征服王の宝具は運命断ち切る剣でしょう。
僕の武器で最強の物である運命切り開く究極の剣を元とするものでしょう。
最も贋作でしょうが、そこに神秘があるならそれは真作となりえますからね



「では何から話すのだ」


「小次郎、まずは僕が学校に言って知ったことから話しますよ」


「分かった」


「学校には宝具クラスの結界が張ってあります」


「マスター、それでは学校に行かれるのは危険すぎます」


「その点はすでに対処済みです。僕にとっては宝具クラスの神秘でさえ神秘たり得ませんから、結界の効果をすでに無害なものに変えてあります」


「さすがは古代王といったところか」


「そのときに分かったことですが、その結界を張ったものはギリシャ神話の英雄のようです」



そう、あの結界を記していた文字は神聖ギリシャ文字。
すなわちメディアと同じぐらい古い英雄であるということです。
あるいは面識があるものかもしれませんし。



「分かりました。マスターはこれからも学校に通われるのですね」


「そうですよ、しかしこれからはキングについてきて貰う事にします」


「どうした古代王ともあろう者が護衛など必要か」


「僕は戦争などとは無縁の時代にいた王ですよ。戦うことは嗜んでいたとはいえ不意打ち等には対処できないかもしれませんからね」


「そうであったな、アトランティスの古代王は2000年もの長きにわたり国を統治したが、その間ただ一度の戦争も起こさなかった名君であったな」



そう、僕は戦いは好きではあったけれど、戦争というものは嫌いなのだ。
僕は皆が笑って暮らせるような世を作りたかった。
2000年間ほぼその理想通りの国を作り上げた。
国は滅びても僕の誇りである国の信念までは折れないのだ。
アトランティスでは戦争だけはしない。
人々は皆その絶対の法を守ってきたのだ。
僕もこの聖杯戦争のような戦争とは名ばかりのものでさえ出たことはなかったのだ。



「そういうことですよ」


「了解した」


「では明日から夜は見回りに出るとしましょう」


「それは我が行くのか」


「あなたと小次郎に交互に行って貰います、僕は常について行きますが」


「そうか」


「では今日は寝るとしましょう」


「そうだな」



こうして僕の聖杯戦争は正式に受理された。
これからは命を懸けた戦いになるだろう。
本当に楽しみだ。






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