Fate/stay night
変わる運命
第一話







新たな一日が始まった。今日から聖杯戦争に正式に参加することになる。
まずはキャスターとこれからどうするかを話し合うとしよう。


「キャスター、これからのことについて話をしたいのですが」


「マスターは今日も学校に行かれるのですよね」


「そうだな、だからできるだけ魔力の消費は控えてほしい」


「マスターが魔法使いだということを隠しておくためですか?」


「察しがよくて助かる」


「分かりました。昼間に仕掛けてくるマスターはいないでしょうしね」


「とりあえず、僕が魔力を開放したら来てもらえますか」


「分かりました」


「そういえば小次郎はどうしているのですか?」


「アサシンは朝食を作っていますわ」


「まさに使い魔ですね」


まさかあの佐々木小次郎が作った料理を食べることができるとは、聖杯戦争に参加した意義があるのかもしれないな。
今現在どれだけのサーヴァントが召喚されているかは知らないが、そろそろすべてのサーヴァントが召喚されるだろう。
まあ、とりあえずは朝食を食べるとしますか。



小次郎の作った料理は大変おいしかった。
少し薄味ではあったが、彼が古い時代の剣豪だと言う事を考慮に入れれば何の問題もないだろう。


「小次郎、貴方はどうして料理ができるんですか」


「暇だったのでな、自分の食事ぐらい自分で作れるようにと思って料理というものを学んだんだ」


「そういえば貴方は伝承にある佐々木小次郎という人物とは別人でしたね」


キャスターの反則技で呼ばれたサーヴァントである小次郎は佐々木小次郎に最も近い剣士であるだけで佐々木小次郎ではありえないのだ。


「そういうことだ。私は佐々木小次郎という名ではなく、燕を切ろうとした名もない剣士でしかな。」


「それでは僕はそろそろ行くとしますかね、弓道部の朝錬もありますし」


僕は穂群原学園の弓道部に籍を置いている。弓道は自分を殺すという点においてとても優れた鍛錬ができるからだ。


「貴様は剣ではなく弓を使うのか?」


「いえ、僕が主として使うのは刀か剣ですよ。しかし弓も少しは使えるのですよ」


「そうか」


「では、行ってきます」


「行ってらっしゃいませ」


こうして僕は学校へと向かった。
ちなみに今は五時半である。学校に着くのは大体五時四十五分位だろう。
学校についてみると結界が張ってあった。
この結界は人の魂と生命力を吸収するようなもののようだったので、
少し細工をして発動はするが結界の中にいる人を眠らすだけにしておいた。
結界を張った本人やほかの魔術師はもとの効力が発動するものだと思うほど巧妙にやったので、
この結界を張った者にも気づかれないだろう。
結界に細工を終えてから僕は弓道場に向かった。
僕が一番乗りかと思ったが、先客がいたようだ。


「早いのですね、美綴さん」


「あたしは弓道部の主将だからな」


「副主将の間桐君がほとんど雑用などをやろうとしないから大変ですね」


「その分お前がやっているだろ、春日?」


「それもそうですけど」


「まあ、こんなところで話をするのもなんだから、続きは中に入ってからにしよう」


僕たちは弓道場に入ってからそれぞれ袴に着替えた。
それにしてもここの弓道場はいいつくりになっている。
これならば、最高の環境に近いだろう。


「それにしてもお前がいまだ弓道を続けているのがあたしには不思議だよ」


「それはどういうことですか、美綴さん?」


「あたしにはお前は弓道を楽しんでいるようには見えないのだがな」


「確かに、楽しんでいるというわけではありませんね。僕は自分を磨くために弓道をやっているのですよ」


「そういうものか」


「そういうものですよ。僕は衛宮君のように百発百中というわけではありませんからね」


「だが、あたしよりは上手いだろう」


「貴方には人望があるでしょう」


「さて、話はこれくらいにして朝錬を始めるかね」


「そうしましょう」


しばらく弓を行っていると間桐さんが来た。


「おっ、間桐が来たか。ということはそろそろほかの連中も来るな」


「おはようございます、間桐さん」


「おはようございます、美綴先輩、春日先輩」


「それにしても間桐さんは早いですね」


「先輩たちのほうが早いじゃないですか」


「僕にとって朝錬は日課ですからね。これを怠ると堕落しそうですからね」


「春日先輩は真面目なんですね」


「おい、間桐も射たらどうだ。それとも茶でも飲むか」


「では、弓を引かせていただきます」


間桐さんの射は美しいというほどのものではないが、日々鍛錬しているのが感じられるものだ。
そうこうしているうちにほかの部員も来て、騒がしくなってきた。



そうして朝錬が終わり、HRの時間になった。
今日は遠坂さんが休んでいるようなので、彼女はマスターになったのだろう。
普通の人間ならばサーヴァントを召喚した次の日はまともに動くことさえできないでしょうから。



特に変わったことも起こらずに学校が終わった。
僕は間桐君に頼まれた弓道場の片付けを衛宮君とやることにした。
それにしても衛宮君は人の頼みを安易に受けすぎる。
僕は弓道部の部員だけれども衛宮君は弓道部の元部員でしかないのだ。


「衛宮君、わざわざ手伝ってくれなくてもよかったのですよ」


「隼人、お前が気にすることじゃないぞ。これは俺が勝手にやっているんだからな」


「そう易々と人の頼みを聞くべきではないと思いますよ」


「どうしてだ?」


「その人自身のためですよ。すぐに衛宮君に頼るようになったら自分で何もできなくなりかねませんからね。特に間桐君なんかは」


「確かに慎二は俺のことを利用しているだけだろうからな」


「分かっているならば何故?」


「俺はできることをやるだけだからな」


「君はおかしいですよ」


「そうか?」


「そうですよ。君は自分自身のために何かをするということが無いのではないですか?」


「そんなことは無いけど」


これは致命的ですね。このままいくと衛宮君は壊れてしまうでしょう。
衛宮君は異常者です。本人はそのことに気付いていないから問題なのですが。
僕も異常者と呼ばれる類の人間ですが、僕は普通でないことを自覚していますからね。
自分が異常者だと自覚した異常者は何が起こっても壊れることは無いですから。
今の衛宮君には何を言っても無駄でしょう。実際に衛宮君に似たような人に会えば変わるのかもしれないのですが。


「衛宮君、今日はこれくらいにしておきましょう」


「いや、後道場の拭き掃除をしておくよ」


「分かりました、僕も手伝いましょう」


「じゃあ、終わったあと、夕食をうちで食べていかないかい?」


「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


僕たちは拭き掃除をした後道場から出た。
外は空気が変わっていた。
これはサーヴァント同士が戦っているようだ。
少し気になるところですが衛宮君もいますし、とりあえず気付かれないように帰りますか。


「衛宮君、この空気は危険です。気付かれないうちに帰りましょう」


「でももし人が襲われているんなら」


「衛宮君も一緒に死んであげるのですか?」


「そんなつもりじゃ無いけど」


「まさか、助けるなんて言うのではないでしょうね」


「それは・・・」


「それは無理だということぐらい分かるでしょう」


「分かったよ、帰ろう」


僕たちは衛宮君の家に向かった。
衛宮君の家に行くのは初めてではないですけど、衛宮君の家で食事をご馳走になるのは初めてですね。
衛宮君の料理はおいしいと聞いたことがありますから楽しみです。



衛宮君の家に着いた。衛宮君の家には侵入者に対する警報の様な結界が張ってある。
まあ、こんなものあってないようなものですけど。
とはいえ、この結界も侵入者を知るのには恐ろしいほど優れているのですが、それだけでは意味が無いと思うのですが。


「さて、それじゃあ、準備するから待っていてくれるかい」


「いや、僕も手伝うよ」


「じゃあ、手伝ってもらおうかな」


突然結界が反応した。


「今のは、なんですか?」


まあ、侵入者だということは分かっているんだけど。


「侵入者だよ」


「戦うことになりそうですね」


「でも誰なんだろう?」


「そんなことを言っている場合ではありませんよ。・・・上か!」


「ほぅ、よく分かったな。楽に殺してやろうと思ったのにな」


「とりあえず僕がお相手するしかありませんか」


「坊主、俺のことは知っているのか?」


「さっき学校で戦っていたもののうち一人でしょう」


「そうだ」


「同調・開始」


「そちらの坊主は魔術師か?」


衛宮君の魔術はどのようなものか気になりますね。
しかし、僕も攻めに回るしかありませんね。
魔力を解放してキャスターたちを呼ぶわけにも行きませんし。



僕と衛宮君は敵に対して有効な攻撃を与えることができなかった。
ついに僕たちは土倉に追い込まれた。
土倉に入ると突然魔方陣が光りだした。
まさかこれは召喚陣ですか。
光が途絶えて二人の人物が出てきた。


「問おう、貴方が私のマスターか?」


「問おう、貴様が我がマスターか」


僕に対して言っているのかそれとも衛宮君に対して言っているのか分かりませんね。
どうやら二人はそのことに気が付いたようですね。
しかもどちらがマスターかも分かったようですね。
男性のほうが僕に近づいてきた。


「貴様が我のマスターのようだな。我はセイバー」


それに対して女性のほうも反論した。


「セイバーは私です。そして私のマスターは貴方のようだ、マスター名は?」


「俺は衛宮士郎。一様この家の家主だ」


「僕は春日隼人といいます」


「くっ、ここでサーヴァントを召喚しただと」


「ほぅ、貴様はランサーか」


「貴様たちは何のサーヴァントだ」


「我はセイバーだ」


「セイバーは私です」


「じゃあ、どちらが本当のセイバーか決めようじゃないか」


ふぅ、今は言い争いをしている場合じゃないでしょうに。
ほら、攻めて来たランサーが憐れんでいる様に見てくるじゃないですか。


「じゃあ、どちらが先にランサーを倒すかで決めましょう」


「いいだろう。ではいくぞ」


「おい、ちょっと待てよ」


かわいそうに、でも敵だから見ていることしかできません。
でも僕は貴方のような人は嫌いじゃないですよ。



女性いや少女というべきでしょうか、彼女がランサーに攻撃を仕掛けた。
彼女の武器は見えない剣のようだ。
ランサーは少女の手によって追い詰められていった。


「自分の武器を隠すとは卑怯な」


「戦いにおいて卑怯などといっているようでは勝てませんよ、ランサー」


「それもそうだな」


「これでとどめです」


少女が剣を振りかぶった。


「調子に乗るなよ」


ランサーも槍を構えた。これはまずい、あの槍は危ない。
あの男性のほうはどうしているのでしょうか。


「あぶ「隙だらけだなランサー」」


「ブファッ」


「何だと」


今のせりふは上から僕、男性のほうのセイバー、少女のほうのセイバー、ランサーの順です。
それにしても少女を踏み台にするとは、いただけませんね。
ランサーはその攻撃をかわしきることもできなかったようだが、何とか逃げ切ったようだな。


「マスター、追うぞ」


「その前にこの状況を説明してくれませんか」


「俺もこの状況が聞きたいんだけど」


「よくも私を踏み台に」


「別にかまわぬであろう、騎士王」


「今はそのような話をしているべきではないのですか」







「アーチャー、私たちに気が付かせるにはどうしたらいいと思う?」


「凛、攻撃でも仕掛けてみるか」





「おい、二人とも外にいる人にも気付きましょうよ」


「うん、マスター何かいったか?」


「どうかしましたか」


二人ともやっと気が付いたようだな。
これからどうなるのだろうか。






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