「担担麺は香りが命」


胡麻は香辛料である、と言えるほどの香りを持つ食品です。
あの小さな粒が、弾けた瞬間の、香りの拡散する様は強烈でまるでビックバンのインフレーションのありさま、と言ったら言いすぎでしょうか? しかしそんな強烈な香りも、時間がたつと急速に薄れて行ってしまう性質のものなのです。

一昔、いや二昔前には、どこの家にも俸禄があって、胡麻というのは食べる直前に炒っていたものでした。
台所で胡麻を炒っていると、すでに玄関からいい香りがしてきて、きょうの夕食の序章効果があったように思えました。
今は、スーパーに行くと「炒りゴマ」などと言って、炒ったゴマを売っていますので、手間はかからないのですが其のぶん、香りが足りないような気がいたします。瀬佐味亭の担担麺は香りが良いと、言っていただけるのは炒りたての胡麻をすぐに挽いて、芝麻醤(ゴマペースト)を店内で作成しているからだと思っています。
また造った芝麻醤も1週間程度で使い切ります。
担担麺の香りのもう一つ、五香辣油もラー油に五つの香りを付けた瀬佐味亭特有の香りです。これも勿論店内で作っております。
唐辛子の香ばしい香りと、八角、桂皮や生姜の香りがごまの香りと渾然一体となり瀬佐味亭の担担麺を良い香りにしています。
手間をかけずに業務用の芝麻醤やラー油を使っても(ましてや最近は「担担麺の素」と言う物まであるそうですが)担担麺はできますが、香りなくしては担担麺の魅力も半減ですね。