「ケーブルテレビの今後に関する専門委員会」意見
平成11年1月
ケーブルテレビは、これまで我が国におけるテレビ放送の普及とともに、
として発展してきており、地上放送、衛星放送とともに、現在テレビ受信世帯の約半数が利用する、我が国における放送システムの1つとして重要な役割を担っている。
今後は、デジタル技術を中心とした情報通信分野の技術革新、情報通信の高度化により、
としての機能、役割を果たすことが期待されている。
一方、ケーブルテレビは、これまで地域密着の自治体単位で許可され、難視聴解消から地域に広がる映像メディアとして発展してきた経緯から、MSOや一部の大規模事業者を除き、各社とも小規模経営を余儀なくされてきていることから、市場、資金、人材等の経営資源の不足による高度化への対応の遅れが大きな課題となっている。
さらに、近年の産業の自由化や規制緩和による競争促進政策により、今後は通信事業者のケーブルテレビ事業への参入が進むことも予想され、事業者間の相互接続によるサービスの広域化や合併等による事業規模拡大等、ケーブルテレビ事業の経営基盤強化が求められている。
このため、多額の投資と高度な専門知識を必要とするケーブルテレビのデジタル化を、将来にわたって着実に推進するためには、新たな視点に立った制度上の枠組みを検討する必要がある。
2.ケーブルテレビのデジタル化に伴う制度上の課題
今後、ケーブルテレビのデジタル化を着実に推進することを目的とし、下記の事項を中心に、事業者の立場から制度上の課題について述べる。
再送信同意制度は、創設以来長年にわたり放送秩序を維持し、視聴者に良好な視聴機会を提供することにより加入者利益を保護し、ケーブルテレビ事業者の事業機会を確保する機能を必要かつ十分に果してきており、加入者利益保護の観点から、今後ともこれまでの制度を堅持することが望ましい。
しかし、デジタル化によって高度化、多機能化する放送事業者の(データ放送などを含む)全ての放送番組を受信し、変更を加えないで同時に再送信する技術的可能性、制度的整合性等については、今後十分な検証が必要であることから、放送事業者等と別途検討の機会を設けるべき。
都市部において建築物等に起因するアナログテレビ放送電波受信障害解消のために、ケーブルテレビ事業者に補償委託されている世帯数は、およそ350万世帯に上ると推測されるが、地上デジタル放送開始に伴い、対象区域の変化等が予想されることから、受信障害解消手法や費用負担のあり方について制度化を含めた検討を要望。
ケーブルテレビのデジタル化は、多額の投資を必要とする一方、事業者にとっては直接的な収益改善に結びつかないことから、地上、衛星に次ぐ我が国における放送システムであるケーブルテレビのデジタル化を推進するため、これまでの財政金融、税制に加え、第3セクター以外への補助金交付、デジタル衛星放送配信センターの整備等、これまでにない大規模かつ包括的な支援策の検討を要望。
3.詳細説明
@再送信同意制度について
ケーブルテレビは、一部に「放送のデジタル化のボトルネック」という向きもあるが、BS、地上デジタル放送とも、当初は広告収入を経営基盤とした無料放送で実施されるといわれており、昨今の経済状況が長引けば、アダプター、デジタルテレビの普及には相当の時間がかかることが予想されることから、ケーブルテレビがこれらの放送を家庭の受像機にサービスを届け得る近道ではないかとも考えられる。
放送事業者の行うテレビ放送の番組が鮮明な画像で視聴できる再送信は、ケーブルテレビの魅力の一つである。
再送信同意制度は、長年にわたり放送秩序を維持し、視聴者に良好な視聴機会を提供することにより加入者利益を保護し、ケーブルテレビ事業者の事業機会を確保してきた、いわば「三方一両得」の制度であり、特に、大臣裁定条項については、放送事業者が同意に応じないことによって生じる加入者利益の損失を未然に防止する、「抑止力」としての機能を十分に果たしているといえ、これまで約
10年の間に裁定に持ち込まれたのはわずか2例にすぎない。現在のアナログ方式による地上放送は、電波の伝搬状況により、当該放送局のサービスエリア外での受信が可能なことから、「区域外再送信」として、放送局の同意に基き、無料で再送信できることが定着しており、ケーブルテレビの魅力の一つとなっている。
しかし、先ごろ報道されたところによれば、地上放送局の多局化進行による経営問題に端を発し、放映権の高騰等も手伝って、地上放送事業者が同時再送信を「有料化」しようとする動きや、区域外再送信を事実上排除しようとする動きがある。
また、地上放送がデジタル化されると、現在アナログで受信できている放送が受信困難となる場合が予想され、区域外再送信を行っている事業者にとっては「有料化」と併せて、大きな経営課題となることが予想される。
ケーブルテレビ事業者が、再送信によって長年にわたり視聴者に良好な視聴機会を提供し、加入者利益の保護してきた経緯から、
再送信同意制度に関しては、裁定条項を含むこれまでの制度を堅持することが望ましい。ただし、デジタル化によって高度化、多機能化する放送事業者の(データ放送などを含む)全ての放送番組を受信し、変更を加えないで同時に再送信することについての技術的可能性、また制度的整合性等については、今後十分な検証が必要である。
ケーブルテレビにおけるデジタル放送の伝送方式は、現在さまざまな角度から検討が行われているが、概ね@パススルーA再多重の2つの方式に集約される。
Aの再多重方式は、デジタル放送のトランスポートストリームを局側で分解、必要なパケットを取り出して再多重、変調する方式である。
この方式は、ケーブルテレビ側でかなりの設備コストがかかるといわれているものの、番組の選択権が確保される。また、ケーブルテレビ事業者によっては、お客様の要請から、現在のCSデジタル放送と同様、デジタル放送の一部をアナログ変換して一時的に放送するケースも考えられることから、番組、サービスが取捨選択されることを考慮すれば、「すべての放送番組に変更を加えないで同時に再送信」することに関して、技術的、制度的課題が残されていると考えられ、
放送事業者、ケーブルテレビ事業者、機器製造メーカー等による検討の機会を設け、必要に応じて同意内容の変更、省令改正等を求めていけるような場を提供していただきたい。A電波障害対策について
都市部における高層建築物等に起因するテレビジョン電波受信障害については、昭和
38年の建築基準法改正により、その発生範囲が著しく広域化し、昭和51年、郵政省「高層建築物による受信障害解消についての指導要綱」発出により、原因者費用負担の考え方に基づき、建築主と受信者との当事者間協議による問題解決を基本とするスキームが一般的に定着した。また、昭和
61年以降、いわゆる都市型ケーブルテレビの発達に伴い、公的団体等による都市難視対策を、ケーブルテレビ事業者に委託させることが積極的に行われてきた結果、現在委託を受けている補償世帯の数は、およそ350万世帯に達し、ケーブルテレビ加入世帯の半数以上を占めるに至った。しかし、2003年以降、地上デジタル放送が開始されると、
といった問題が生じる恐れがある。
現行のアナログ放送と同一内容のサイマル期間に限っては顕在化しないが、地上デジタル放送が「柔軟な編成」に移行する場合においては、早急に対応する必要がある。
他方、地上デジタル放送をケーブルテレビ経由で視聴するためには、
が考えられるが、再変換装置をテレビに内蔵すれば、当面の対策が可能になると考えられることから、受信機製造メーカーへの働きかけを要請したい。
また、新たな電波受信障害の補償に関して、これまで多くの委受託契約の論拠となっている、昭和
54年の建設省事務次官通知に替わる、新たな制度を設ける必要がある。その内容は、
とし、郵政省、建設省、放送事業者、建築物所有者および住民の間で費用分担の基準を定め、ケーブルテレビ事業者に施設設置と運用を委託するものとする。
さらに、これまで、電波障害補償、特に公的機関の対策事業では、設置費
+20年分の維持管理費+諸経費を、対策完了後に一括して支払われてきた。税務当局からは、その収入について全部を単年度の売上げとして計上、引込線までを含む設置費を資産計上し、毎年償却するよう指導されている。
しかし、20年分の維持管理費については、更改、改修の費用を見込んでおり、本来は預り金として負債に計上、毎年取り崩して行くべき費用であることから、税制面での扱いに関しても考慮していただきたい。
Bケーブルテレビのデジタル化支援策
ケーブルテレビにおけるデジタル放送の伝送方式は、現在さまざまな角度から検討が行われているが、概ね@パススルーA再多重の2つの方式に集約される。
パススルー方式は、先にNHKの共同受信設備における対応でも示さたとおり、幹線の光ファイバー化、伝送路の広帯域化を行い、BSデジタル放送は周波数変換、地上デジタル放送はそのまま、CSも変調方式の変更のみで伝送する方式である。
この方式は、
1)
センター装置が簡易となる2)
データ放送まで含め、すべての放送をそのまま伝送ができる。といった利点がある一方、
といった課題もある。
再多重方式は、デジタル放送のトランスポートストリームを局側で分解、必要なパケットを取り出して再多重、変調する方式である。
この方式は、
といった利点がある一方で、
いずれの方式においても、多額の投資は必須であり、MSOや一部の大規模事業者を除く大半のケーブルテレビ事業者は、地域密着の自治体単位で許可され、難視聴解消から地域に広がる映像メディアとして発展してきた歴史的経緯から、経営規模が小さく資金的余裕もなく、「貸し渋り」に代表される昨今の経済状況もあいまって、デジタル化投資には到底耐えられる体力を持ち合わしていないのが実状である。
これらの問題に対処するためには、国の支援を仰ぎながら、
を図ることによって、ケーブルテレビのデジタル化のみならず、広域化、フルサービス化を円滑に推進することが可能となると考えられる。
これらの施設整備には、概算で1,000億円の費用が必要となるが、地上、衛星に次ぐ我が国における放送システムであるケーブルテレビのデジタル化を推進するため、「デジタル番組衛星配信センター」「デジタル番組地域配信センター」「局間光ファイバー網」等の整備に対する国の支援について、平成12年度実施を目標に、早急に検討いただくようお願い申し上げたい。
また、従来からの、財政、金融、税制面での支援策についても、デジタル化の緊急性、重要性に鑑み
(財政)
(金融)
(税制)
等、「デジタル化促進緊急対策」の検討を要望したい。
以
上